カリフォルニア美術大学卒業制作展 2004

HAPPENINGText: Mark Buswell

もう一人、フィルム部門で紹介したいのが、ショーン・ピーターソンの「スタンディング・オン・ウォーター」だ。このフィルムは、彼の個人的な体験と歴史を織りまぜて表現している。子供の時に両親が撮影した写真と、グラフィック、そして最近のものから昔のものまで幅広い年代のサーフィン映画を使い、消費社会や、サーフィンに対する本物の精神が失われつつある現状を指摘する。視覚的に面白いのは、カリフォルニアのサンタクルーズ(ここでショーンは育った)の沖合で撮影されたサーフィンフィルムだ。

講堂を出ると、次はギャラリー。壁から床、そして天井に、落第した40人の学生の作品と、卒業制作クラスの作品が展示されていた。手づくりの本、ポスター、インスタレーション、インタラクティブな作品など、どの作品を見ても、どれだけの時間とエネルギーとお金が費やされたかは一目瞭然だった。僕は、学生が手掛けた作品達に強く刺激された。

目の前に並ぶ作品を何気なく見ていると、モリー・スコネツキの本を発見した。それは学術書のように厚く、茶色の布のカバーがかけられていた。コースの履修中、「アドバイス」に対して代価を払うということに、意味はあるのかという疑問を持ち、様々なところからアドバイスをもらってみたが、まったく答えを見つけられそうにないという状況に直面し、彼女は、ほとんどの場合従わないであろう助言を求めるために、私たちがどれだけの量の時間やエネルギーを費やしているかをこの本の中で論じている。また、『私たちは、誰かに助言を与えることや、私たち自身が生きる道の有用性や機能に、めったに疑問を持ったりなどしません。』とも述べている。素晴らしいタイポグラフィー、美しいページ構成、機知に富んだ文章は、数多くある作品のなかでも一際光っていた。

デリカッテッセンで買った軽い食事にかぶりついていると、卒業以来ずっと会っていない友人や先生に再会した。1年経った今でも、卒業制作への恐怖はまだリアルだった。しかし、今まさにメディアカルチャーの中での活動を始めるというクリエイタ−に言える事は、学生の時のそのような経験は、絶対に後で役に立つということだ。確かにこのプログラムは、難易度の高さで有名だが、良い作品を制作するために、研究、提案、修正および設計のプロセスを学生が経験するというのは、非常に大切な事だ。

カリフォルニア美術大学卒業制作展 2004
会場:カリフォルニア美術大学サンフランシスコ・キャンパス
住所:1111 Eighth Street, San Francisco, CA 94107
TEL:+1 415 703 9500
https://www.cca.edu

Text: Mark Buswell
Translation: Naoko Fukushi
Photos: Mark Buswell

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