ASA-CHANG&巡礼 FEAT. 小泉今日子

PEOPLEText: Yasuharu Motomiya

」そして「つぎねぷ」とリリースを重ねてきた、ASA-CHANG&巡礼が、女優として歌手として時代と共に変化し続け、常にシーンの特異な場所に立ち続ける日本のポップスター、小泉今日子をフィーチャリングしてニューシングル「背中」をリリースした。日本のポップシーンに風穴を開けるような衝撃作「背中」について、お二人に話を伺った。

自己紹介からお願いします。

ASA-CHANG(以下A):朝倉です。朝倉の朝は、朝日新聞の朝です(笑)

小泉今日子(以下K):小泉今日子です。歌手や女優をしています。今日子の今日は、こんにちはの今日です(笑)

最初に、お二人がコラボレートすることになったきっかけを教えてください。

A:小泉さんにボクから電話したんですよ。もともと、昔、ヘアメイクの仕事をしているときに小泉さんを担当
していて、その当時からの旧友としてボクがお願いしたんです。

どうして小泉さんだったのでしょうか?

A:小泉さんじゃなきゃダメだって思いました。

それでは、その時小泉さんとしてはどう思われたのですか?

K:そういった昔からの旧友とか、戦友にそういう何かの折に必要とされることは、めったな事じゃないじゃないですか。みんな大人だし。遊び感覚じゃないので。ホントに必要とされている気がして嬉しかったです。

その間、ASA-CHANGは様々な活動をしていましたね。(東京スカパラダイスオーケストラを脱退後の活動など)これまでの曲は聴いてらしたんですか?

K:聴いてましたよ。スカパラともライヴをやったり、レコーディングに来てもらったりしていましたし。

A:スカパラとしても、巡礼としてはちょっと関係がありましたね。

K:スカパラも良く聴いていたし、ライヴにもよく行っていました。巡礼はライヴは行ったことがないけど、古い友達が何をやっているかって常に気になりますから、もちろん巡礼も聴いていました。

巡礼を聴いたとき驚きましたが、その巡礼を聴いたときどう思いましたか?

K:すごくASA-CHANGらしい。スカパラやってるときも、少し昭和のにおいのする切ないものが好きだったから。

A:根っこにある。

K:そこは変わってなくて、ルックスが変わってるのだけど、根っこの部分は変わってなくて、そこが気持ちいい。巡礼はホントに文学と数学が同居してる感じがして、そこがすごくASA-CHANGらしくて。

A:ボクが今巡礼とかやっていると、普通の人はまるでコロっと違うことやっていると思うけど、小泉さんのように20代の頃の多感な時期を知っていると、根っこが分かってるって言うか。変化のしてるところとしてないところがすごく分かってて、何も言わなくても分かり合える感じがしますね。分かってもらえちゃってるって言うか。

そういった時代の仲間などは、どなたがいらしたんですか?

K:沢山居ましたね。東京ナンバーワンソウルセットのビッケとか他に高城剛君とか。なんか群れを成してましたね、毎晩。

A:僕達にとっての20代でしたね。第二次青春みたいな。

小泉さんのトラックの声をもらったときの印象や感想はどうでしたか?

A:小泉さんの声が、予想をはるかに超える存在感で、小泉さんに頼んでホントに良かったなと痛感しました。最初から見えてたといえば見えてたんだけど、巡礼の場合、一音一音切ったりして、設計図通り組み立てていって楽曲に仕上げるんですが、切っても切っても、金太郎飴状態で、どう切っても小泉さんっていう存在感が出ていて、普通そうはならないんですが・・・

エディットされた後の曲を聴いてみて、小泉さんはどう思いましたか?

K:最初は こうなったかという感じでしたが、何度も聴いていたら切なさとか、考えが止まったり進んだりとか、言いよどんだり、つい言っちゃったりとか、会話をしているときの人の頭の中みたいなところが出ていて、すごくいいと思いました。

A:そう・・・ 全部言われちゃったな(笑)。頑張ろうと思ったけど全部言われちゃった(笑)まるでそうで、何で巡礼がリズムをランダムに切るかって言ったら、人間の感情って揺らぐでしょ、「うーん」って考えたり、頭の中でワーッと周ってるんだけど口に出なかったり、そういった情景を音像化したいから切っているので、すごく楽しんでやっているのではなく、そういった、情景を作りたい表現をしたいからあのような音像になっているのです。自分としては、けして変な音楽を作りたいとか、実験をしているとは思っていないですね。

朝倉さんは今回、バラードを作ってバラードの究極の形は演歌と言っておられましたが、ボクは演歌より民謡や童謡などを聴いたときの感覚に近いものを持ちました。「つきねぷ」の枕詞のように、こういった日本の古い文化に興味がある理由としては何かあるのでしょうか?

A:そういったものはないです。僕は日本の音楽をやっているので、ザ・ベストテンとか昔テレビでやっていたのですが、そういった歌番組を見て育ったので、日本の音楽を聴きなれてるって言うことが、隠しようがないことであるのですよ。洋楽を否定するわけではないですが、ボクにとって洋楽っぽくやることがすごく不自然になってきて、だから巡礼の音になったんでしょうね。ただ何かを目指してってわけではなく。

K:私たち最後の世代かもしれないけど、少し上の世代の人とか洋楽コンプレックスみたいなものが、邦楽否定するのがカッコいいみたいな時代があって、その後の世代だから、逆のことに興味を持ったっていうのもあるかもしれませんね。心の中に染み付いてて、育った環境とか。好きですしね日本のそういった部分が。

A:それで、スカとかそういったルーツミュージックとかもやってみて、20代ってそういうの憧れるでしょ? その時代も経てるから、余計に自分を表現するというか、誰かの真似はできなくなっちゃったっていうか。

それでは、音楽を作るうえで、誰も作ったこともなく新しい未来の音楽を作るというようなところを意識したりしているのですか?

A:未来かどうかも、過去かどうかも分からないけど、自分の中では現在の音ですね。現在の考えている事を音像化するとああなってしまうというか。その上で、小泉さんが必要でした。

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