第1回 SFMOMA ウエイビー・アワード
HAPPENINGText: Kanya Niijima
「POST TV」や「ATLAS MAGAZINE」など、著名なウエブサイトを芸術作品として、ここ数年コレクションしているサンフランシスコ近代美術館(SFMOMA)が、オンライン・アートにフォーカスをおいた、当美術館のコンテスト「SFMOMA WEBBY AWARDS」(ウエイビー・アワード)を初開催した。
インターネットをアートの表現媒体として活動する、世界中のアーティスト達を奨励する目的で年頭に発足されたこのコンテスト、5月12日の審査発表にて、ミカエル・サミン(ベルギー)とオーリア・ハーヴェイ(アメリカ)のコンビによる「ENTROPY8ZUPER!」が、特賞の30,000ドルを受賞。次点として、イチロー・アイカワ(日本)の「@2000」、ヤン=ハエ・チャン(韓国)による「YOUNG-HAE CHANG HEAVY INDUSTRIES」及び、ラファエル・ロサノ=ヘメル(カナダ、メキシコ)の「VECTORIAL ELEVATION」の各自が6,500ドルの賞与を獲得した。
ベルギーを拠点とする「ENTROPY8ZUPER!」は、オーリア・ハーヴェイとミカエル・サミンによるロマンティックで官能的なストーリーを、独特のビジュアル・ランゲージを通して表現。アブストラクトで、且つ挑発的なイメージ、テキスト、及びサウンドをウェブ上でクロスオーバーさせ、物語性の強い構成が観る者を自然と魅了する。機械的なエクスプレッションが多いグラフィックサイトが多い中で、二人が放つ有機的なオーラは、人間味のある、感情的で正直な表現をかもしだしている。
一方、シアトル在住のイチロー・アイカワによる「@2000」は、実在する現空間とデスクトップ上のバーチャル・スペースの関連性を探究した作品。ジャバスクリプトを多用したアイカワ氏のサイトは、フラッシュ/ショックウェーブとは一線を画すインターラクティビティーを実現しており、モニター上で拡張し続けるアイカワ氏の空間に対するビジョンをダイナミックに展開している。
同じく次点のヤン=ハエ・チャンによる「YOUNG-HAE CHANG HEAVY INDUSTRIES」は、グラフィックを一切使用せずに、テキスト/タイポグラフィーのシークエンスだけで構成されているといった、意外な手法を用いたウェブサイト。サウンドトラックとテキストを効果的にシンクロさせながら、メッセージ性の強いテキストの数々をスピーディーに流す彼女の表現法は、シンプル且つダイレクトで、ビューワーとの効果的なコミュニケーションを図っている。
カナダ、メキシコから入賞したラファエル・ロサノ=ヘメルの「VECTORIAL ELEVATION」では、メキシコシティーに実際に設置された18のサーチライトを、ユーザー各自がウェブサイトを通して遠隔操作できる、といったインターネットがもつグローバルなモバイル性をフルに活用した作品。世界中のどこからでも、サイトの3Dインターフェースを使って、メキシコシティー上空に投影される、巨大な光のスカルプチャーをリアルタイムにデザインできるといった具合だ。ユーザーはウェブカメラを通して、自分のデザインを楽しむ事ができ、現地では25km離れたロケーションでも作品を観覧できたという。残念ながら今年1月6日をもって、同プロジェクトは終了しているのだが、現在でもウェブサイトには、世界中の人々が過去にデザインした作品が大量にアーカイブされている。
Text: Kanya Niijima