メタモルフォーゼ 2003

HAPPENINGText: Yasuharu Motomiya

近年、急速に増え続ける日本のオープンエアー・フェスティバル形式での音楽イベントの中でメタモルフォーゼは、その規模の大きさもさることながら、クオリティ、出演するアーティストのジャンルレスな多彩さなど、他に類を見ない特別な位置を占めている。そのイベントが去る8月23日、24日、富士山の裾野に広がる日本ランドHOWゆうえんちで行われた。

おもちゃ箱をひっくり返したような世界。遊園地を舞台に行われるこのイベントは、音楽の遊園地というこんな言葉がぴったりで、レーザーショウ、会場に浮かべられたバルーン、そこかしこにある不思議なデコレーションや照明が、遊園地という空間と相まってどこか懐かしいのだけど見たこともないような世界にやってきたような錯覚に陥る。そこに、極上の電子音楽と霊峰富士。今回のプログラムは、メタモルフォーゼという大きな箱の中に、インディペンデントなクリエーター達がそれぞれの才能を持ち寄りコラボレーションした時に生まれる有機的な体験を見るものも演じるものも共有できるものだった。

それを代表していると思えたのが、「ニッポン」のアート/サブカルチャー/テクノロジーシーンにおいて活躍するクリエイターが集結し、立ち上げたアートプロジェクト「RIS」だった。会場各地に設置されたビジュアルインスタレーションや実験的な音響・映像をテーマに、会場内に設置されたドーム型の空間「RISDOME」などで、宇川直宏や青木孝允など、いまの日本を代表する旬なアーティスト達がパフォーマンスを行ったのだった。こういった機会はダンスミュージックというキーワードで集まった人たちにも様々なジャンルのアートに触れる機会を作ってくれる。


RISDOME

そしてソーラーエリア、ルナエリアでの本割。現在進行形クラブミュージックのショウケース的な色合いを帯びたラインナップは、ダンスミュージックだけではなく、音という共通語を持ったアーティスト達のエキスポであり、毎回新鮮な驚きを与えてくれる。昨年のソーラーエリアでの井上薫から最後のクリストファー・ホーンまでの流れはボクのパーティーライフの中でもベストシーンの一つとなった。クリストファーの抜けるようなビートと空、そして富士山、シンプルだがこの3つが作り出す力強い空間はイベントの最後を飾るに相応しかったと思う。

両エリアの区分けとしては、ルナエリアがフルムーンよりで、ソーラーエリアがフリースタイルより、という感じで、厳然な分け方はされていなかったが、そこもメタモルフォーゼらしいところだ。昨年に引き続き登場したグリーンベルベットは、今回はルナエリアでのDJでのパフォーマンスで、胸から上あたりを規則正しく動かすのが特徴的で、ファンキーなシカゴの香りを漂わせていたし、田中フミヤ、ジョーイ・ベルトラム、サバーバンナイト、そしてメタモルフォーゼを主催する、マユリという面々が富士をバックに踊る人々を反復するビートと増幅するイメージとの邂逅へと導く。特に印象的だったのは、セバスチャン・リーガーのプレイ。24歳の若さとは思えない落ち着いたプレイで無理にノリを作り出すのではなく、ゆったり漂うようなグルーヴがいつしか大きなうねりになり、いつの間にか踊らされているといった感覚だった。

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