朝食のためのリーディング

HAPPENING


リーディング・フォー・ブレックファスト」という団体がある。これは、およそ2週間毎に開かれるサークルで、朝食をとりながら物語の朗読を楽しむのが目的だ。そして今回、このサークルからのはじめての本が出版された。そしてその記念パーティーが、寒空の中、6月7日の午後、ブエノスアイレスにある、あるタワーで行われた。

南半球に位置するアルゼンチンは今、冬。天気は大荒れだったが、タワーの窓からは街全体を臨む景色を楽しむことができた。私達が参加したお茶会が行われたビルは(今回はブレックファストではなくランチでした)「イングリッシュ・タワー」とい名称がついており、名付け親はイギリスからアルゼンチンに移住したイギリス人だとか。このタワーがイギリス人住民からアルゼンチンに、1810年 5月に発生した独立記念日を記念して寄贈されたためだ。そして現在このタワーでは、6つのホールを利用して現代アーティストの展覧会が開催されている。

サークルのメンバーが一同に集結し、朝食を共にする。ゲストが紹介する題材もさまざま。クッキーをお供に、本を読み、そしておしゃべりを楽しむのがこのサークルの基本だ。毎回その会合は録音され、それが文書になる。それが何度となくくり返されているのだ。

リーディング・フォー・ブレックファストがはじめて開催されたのは、 2001年のこと。当初はグループの規模もまだ小さく、さまざまな本についての意見を交換するために場所を借り、会合を開いていた。そしてその目的と言えば、お祭り気分の精神と、独裁的な政治体制に繋がりを作り上げるという、ちょっと風変わりなものだったとか。メンバーを代表して朗読する人物がおり、ちょっと沈黙があると、その時に聞こえるのはお茶をすする音だけだ。

会合開始1周年を記念して行われたパーティーは「ビューティー・アンド・ハピネス」というギャラリーで開催。お茶会ではなく、朝食会にスタイルが変わったのは、2002年に入ってからのことになる。当時は、地元自治体が包囲期間を宣告していた時期もあり、そういった期間中の会合は、公の場で行われていた。ブエノス・アイレスの中心街、第9ジュリオ通りに面しているスタジオ、バー、カフェ、はたまた地下鉄駅に隣接している駐車場など、彼らの会合の場所は実にさまざま。彼らが話し合う題材は、社会学、美術史、そして政治など。

ライターでもあり、この会合のアシスタントも勤めるガルシアーナ・メンデツは「毎回、会合が終わると、もう次の会合まで待てないという気持ちになります。彼らはサークル内のみで配付される雑誌を制作しているのですが、雑誌にはまだまだその会話が続くような対談にあふれています。個人的には、講議と呼ばれるものすべてがこのような対談になるべきだと思います」と語ってくれた。

台所からの贈り物は、心のこもった贈り物だ、と言う人がいる。料理は私達の気持ちを捕らえて離さないもの。そして料理に関する小説、物語、そして映画の数は計りしれない。耳に心地よい声を聴きながら、濃厚で味わい深い料理を楽しむというのは、もうほとんど悩殺的な状態だ。そして誰にでも、おばあちゃんが絵本を読んで聞かせてくれたり、あるいはベッドの中で朝食を楽しんだ、という思い出があると思う。そういった思い出は、まだ無知だった頃の幸せな子供時代を蘇らせてくれるものだ。ミルクやチョコレート、そして砂糖といった甘い存在。お母さんが作ってくれた手作り料理の味は、どこへ行ってもひとつとして同じものは存在しないものだ。もしかしたらその味こそ、誰もが一番良く知っているものであり、それを求めるあまり、本を読み進めることに夢中になってしまうのではないのであろうか。手作りクッキーの作り方は現在、サイト上で公開されており、それはそれで、また新たな講議のよう。実際に、イベントそのものがレシピを中心に展開されるため、会合も盛り上がるというものだ。

イングリッシュ・タワーで行われたような大規模なイベントでは、小さなテーブルにコーヒーや紅茶、そしてもちろん、クッキーも用意されていた。ここまできたら、もうクッキーの甘い存在を無視することは不可能だ。実際、本の紹介というものは、私達の気持ちだけではなくお腹までも満たしてくれるようなクリエイティブな人たちにとっては、そしてこの寒い冬の時期にはちょうど良いパフォーマンスだ。こう考えると、生きる楽しさを感じることができないだろうか?

Breakfast at the Tower
Presentation of the book “Reading for breakfast”
会期:2003年6月7日(土)
会場:The English Tower
住所:Del Libertador Avenue, San Martin St.
   Buenos Aires, Argentinia
TEL:+54-11-43-72-3612
desayunandolecturas@hotmail.com
www.desayunandolecturas.com.ar

Text and Photos: Gisella Natalia Lifchitz
Translation: Sachiko Kurashina

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