ジョエル・トゥーリンクス展「与えられた存在、シカゴの場合」

HAPPENINGText: Matt Smith

現代アートの基礎となる、60年代から70年代にかけての概念芸術運動(コンセプチュアリズム)は、アイディアやコンセプトを作品の中心的な構成要素とする。この概念の芸術(コンセプチュアル・アート)は、非物質化(テキストや図や表で表される場合もある)や、日常のオブジェクトを使用することを指し示す場合もある。この芸術運動の最も有名な実践者であるマルセル・デュシャンは、ダダイスムが標榜した「反芸術」ではなく「無芸術」であると述べており、フルクサス運動のメンバー、ジョン・ケージ、ナム・ジュン・パイク、オノ・ヨーコやヨーゼフ・ボイスらによって世界中に伝播されていった。

ここに、ジョエル・トゥーリンクスというベルギー人アーティストがいる。現在、彼女にとってはアメリカでは初となる展覧会「与えられた存在、シカゴの場合」がルネッサンス・ソサイエティーで開催されている。過去30年間の概念主義の革新の歴史の輪を、現代にまで広げ、図式的なオブジェクト言語やアイディアをアートの世界の会話にもたらした。

ルネッサンス・ソサイエティーは、シカゴ大学のキャンパス内にあることから、トゥーリンクスは段ボールやストロー、黒板、机、そして椅子などを選択し、それらを共通項があるもの同士で分け、テーブルの上に再配置した。その結果現れたのが、いつもの教室の風景でありアート作品という気がしない。しかしそこに漂う印象はかなり力強いものだ。

神聖なのに世俗的、そして特権的でありふれたアークブリッジは、ある程度は取り消すことができ、また逆に取りかえすこともできる。僕がこの展覧会を訪れた時、ギャラリーの窓は全開になっており、午後の光が燦々と入り、キャンパスの外の音がすんなりと展示品と融合していたのが感じられた。もちろん、それぞれのオブジェが何も特別な意味を持っていなかったり、アートの実践であったり、そういったことを無視するのを好んだりするような傾向といった差異があることも確かだ。しかし、写真のスライドに描かれたグレーのペンキや、色鮮やかに描かれた円によって、結果的には見る側の美術館との関係や、展覧会の内容へ注意を向けさせることになっている。

Joelle Tuerlinckx “Chicago Studies: Les Etants Donnes”
会期:2003年5月4日〜6月15日
会場:The Renaissance Society at the University of Chicago
住所:5811 S. Ellis Avenue, Chicago, IL 60637
TEL:+1 773 702 8670
info@renaissancesociety.org
http://www.renaissancesociety.org

Text: Matt Smith
Translation: Sachiko Kurashina
Photos: Courtesy of Renaissance Society © Joelle Tuerlinckx

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