「グラフィックス:デザイン・ナウ」展

HAPPENINGText: Alistair Beattie

最近ある人から、私が以前紹介した「ゲーム・オン」展についてのレポートを批評するメールが来た。実際に誰かが記事を読んでいるのだという事実として私はそれを受け止め、そして密かに嬉しかった。とにかくその人が言いたかったのは、私は浮わついており、よくいるジャーナリストのようで、個人的な内容としては十分ではないし、誰もがうんざりしている双曲線的なPR記事の枠を超えていないということだった。この批評に大いに勇気づけられた私は、車に飛び乗り、ロンドンにあるデザイン・ミュージアムに向かった。

タワーブリッジはその日、時代遅れのような形相できらきらしていた(しかしこの方が、旅行者うけするのだろう)。市長の新しい隠れ家は、未来のエコシステムが導入されており、地味に洒落ている。テムズ川は、かつて本当にそうだったかのように太った茶色い蛇のようだ。古代、ビクトリア、モダン、ポストモダンの建物が、ごちゃ混ぜになっていて醜い有様だ。古い慣習と無秩序の間で絶えず変化する勢力のバランスを変化させる事を考えるには、適した環境ではないだろうかと考えていた。


Matthew Carter

私が行った展覧会「グラフィックス:デザイン・ナウ」は、グラフィックデザイナーのクリスチャン・クスターズとデザイン史家のエミリー・キングによる絶賛された書籍「Restart: New Systems in Graphic Design」(テムズ&ハドソン出版)の編集者のキュレーションで行われている。

本展では、国際的に活躍するアーティストの興味深いセレクションからの作品を通じて、今のデザインを鋭く切る洞察力を得ることができる。いつもは実験的なものであったり、編集上の作品が取り上げられる事が多いのだが、クライアントがいらいらするような存在ではなく、インスピレーションになりうることがあれば、彼等とのプロジェクトのバランスも上手く取ることができるのだ。私たちの誰もが、このことを時には思い出す必要があるのかもしれない。

デザイン・ミュージアムは奇妙なところだ。その素晴らしい意図に反して、いつも何だか不思議なところに居る気がしてしまう。きっと、ロンドンにある主要なミュージアムとは、それ程強い繋がりはないのかもしれない。


The Design Museum

展覧会は、上階で開催しないほうがいいのではないかと思った。ガラスケースが置いてあるのだが、これらは印刷物の作品を展示するには特に向いていないと思う。ヨージ・ヤマモトの為にM/Mが制作した作品は粗野に飾られており、ポスターの下の部分もまるで昨日残したサンドウィッチのようにくるんと丸まっていた。言っておくがこれは、ザ・“デザイン”・ミュージアムでの出来事である。


Andrew Blauvelt

会場の空間自体も広くないのは残念な事だし、それ故に素晴らしい作品集に収められているプロジェクト作品を十分に収容できていないのもどうかと思った。この展覧会でフィーチャーされているデザイナーの中には、受賞歴もあるアメリカのタイポグラファー、マシュー・カーターとアンドリュー・ブローヴェルトの名前も見つける事ができた。彼等はミネアポリスにあるウォーカー・アート・センターで活動している。

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