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ウーマンズ・アート展

HAPPENINGText: Natalia Volodina, Timo Linsenmaier

女性と男性では、作り出されるアートに何か違いがあるのだろうか? この興味深い疑問を探究しているのが、国立トレチャコフ美術館で開催されている「ウーマンズ・アート」展だ。本展は、女性によるアート作品に焦点を当てるもので、1400年代から現在に至るまで、ロシアの女性の作品だけを扱うのは本美術館では初めての試みだ。絵画、グラフィックス、装飾芸術からインスタレーションまで様々な作品を紹介しているこの展覧会。歴史的な要素も持ちつつ、現代的な特徴も兼ね備えた本展は展示を通じ、女性アーティストが行い、そして今日でも直面している具体的な発展について着目している。

ゴルキー公園の反対側に位置し、モスクワ川を一望できる、クリムスキー・ヴァルにある国立トレチャコフ美術館。広々とした階段を上り、ウラジーミル・タトリン(1885-1953年)の「第三インターナショナル記念塔」(1919年)の素晴らしい建築模型を通り過ぎ、左に曲がって企画展示ホールに向かう。20世紀のロシア美術全体を網羅することを目的としているトレチャコフ美術館の常設コレクションは一見の価値がある。ここには現代美術のアイコンが数多くある。最も有名なのはもちろんカジミール・マレーヴィチ(1878-1935年)の「黒の正方形」(1915年)だ。ロシア革命前と後の芸術を区別しなくなったのは最近になってからで、イデオロギーの壁のない芸術の連続性を生み出している。

展覧会の入り口となる真っ赤な口を見つけたら、そこが展覧会の入り口だ。ここからは、15世紀の世界なのだ。古典的で正統派のイコンの伝統では、赤は人間の本性、殉教、そして血と生命の苦しみを表している。同時に、赤は常に王の色であり、こうした当時の状況は女性アーティストの歴史からも見受けられる。展示は、クレムリン博物館の収蔵品である、見事に刺繍された祭服から始まる。最近まで、教会の牧師たちの豪華なローブを飾るための刺繍は主に女性の仕事であり、その歴史は中世にまでさかのぼる。様々な資料と共に展示されたこれらの衣装は、歴史的にも美術的にも価値が高く、非常に重要なものだ。


Élisabeth Louise Vigée Le Brun, Princess Ana Gruzinsky Galitzine, 1797, Oil on canvas, 135.9 × 100.3 cm

18世紀になると、厳格さが残っていた風潮が緩みはじめ、貴族達がファインアートに興味を持ちはじめる。特に皇族の女性達に親しまれ、パーヴェル1世(1754-1801年)の皇后であるマリア・フョードロヴナ(1759–1828年)とその娘たちは、オランダの絵画を模倣して多くの静物画を描き、さらなる娯楽として彫刻も制作した。18世紀後半になると専門的な訓練を受けた芸術家が出現してくる。フランスの古典主義の画家の娘である18世紀で最も有名な女性画家、エリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブラン(1755–1842年)は、ロシアの貴族から歓迎され、皇族の肖像画を多数描いた。その頃、芸術学校が誕生しフランスの小説を読むだけでなく、絵画に情熱を注ぐことになる。


Sofia Vassilyevna Sukhovo-Kobylina, Self-Portrait, 1847, Oil on cardboard, 37.9 × 27.9 cm

サンクトペテルブルク美術大学を女性で初めて優等で卒業した、ソフィア・ヴァシリエフナ・スホワ・コビリーナ(1825-1867年)。ソフィアが描いた絵画の題材からも分かるように、この頃から女性の自尊心の向上が始まった。当初は子供や家族に囲まれた自分を中心とする絵画が多かったのが、自由で自信に満ちた自画像へと絵画の題材も変化してきた。


Zinaida Serebrjakova, At the Dressing-Table (the self-portrait), 1909, Oil on canvas, 75 x 65 cm

女性がようやく州立アカデミーに入学できるようになると、すぐに当時のアートシーンにおいて重要な役割を果たし始める。19世紀末のレアリスム(写実主義)に対する反発は、魂の抜けた学術的な絵画の形式とは対照的に、ロシア全土からも発生した新しい芸術の波となった。その好例は、オルガ・ラゴダ・シシキナ(1850-1881年)やマリーナ・フョードロワ(1859-1934年)だ。世紀の変わり目の注目すべき人物としては、ジナイーダ・セレブリャコワ(1884-1967年)が際立っている。印象派の原則を踏襲しつつ、彼女は新古典主義への流れの勢いに革命をもたらした。世界的に有名な絵「化粧台にて。自画像」(1909年)は、知性と自発的な知覚が混ざり合った静けさの中に、エロティシズムと自己敬愛が表現されている。

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