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クリス・ヨーミック

PEOPLEText: Aya Muto

建築が今までになくアートやファッションとの距離を縮めている今日この頃、この「ポスト」という概念も馴染みやすくなっている。モダニズムやモダン建築を思い浮かべると、余分な要素がそぎ落とされた、ミニマリズムとはまた違った次元での威厳と機能が支配する世界の展開をみる。そしてそれに反発するかたちで起きたポスト・モダニズムというムーヴメントは、ありとあらゆる非機能的な要素が放り込まれる。身体性がことごく否定されるファッションがここで前線に出てくる。

ワシントンDCで少年期を過ごしたクリス・ヨーミックはアートスクール進学を機にスケートボードを片手にニューヨークへ。まもなく学校からは姿を消すことになるが、勘の強さを生かしてレコード会社のアートディレクターの元、働き始める。グラフィティ・アートからより幅の広い、洗練されたグラフィック表現へと飛躍したのもこの時期。さらにスケート道を極める彼は、やがて西海岸へ。スケーターブランドの靴のデザインに勤しむかたわら、アート作品はますます研ぎ澄まされる。

現在ではスケートボーダー・マガジンのアートディレクターを勤めるヨーミック、スペースコントロールのセンスは抜群。さすがはストリートの壁を相手にしてきただけあって大きなキャンバスにダイナミズムを変えてもその几帳面さはますます際立つばかり。彼のアートは評論家の手にかかると「ポスト・グラフィティ」と簡単にくくられるようだが、どうもそれだけではない、その先のムーブメントの要となる要素がヨーミックの作品には編み込まれている気がする。

一般に言うモダニズムが「静と機能」であるならば、そもそものグラフィティの起動点はその全く逆で、「乱と雑」。それぞれの概念に「ポスト」をつけることにより表現されるその反動で起きてくるムーヴメントが表される。ポスト・モダニズムは見事に「乱と混沌」を追及し、ポスト・グラフィティーは「静と均整」を体現する。確かにヨーミックの作品はこの後者に位置するのだが、その上にさらに有機的「生」の要素が多いにモノを言っている。例えば彼の見つけてくるオブジェ、染みついた古いレシートのロールがいつの間にかデザインパターンと化していたり、70年代調の必要以上にうるさいパターンの壁紙が遊びを示唆したり。この機能を無視した「無駄」にポストモダンをみるわけである。

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