ルイザ・ランブリ

PEOPLEText: Ilaria Ventriglia

ルイザ・ランブリは、イタリアで最も有名なアーティストの一人だ。 1969年、カント(コモ)に生まれ、現在はベルリンとミラノで活動。彼女は、前回のヴェネツィア・ビエンナーレで金獅子賞を受賞している。

彼女の作品は写真やフィルムで構成され、ボリューム、光、透明感を醸し出している。作品を分類することなど不可能だが、そんな事はどうでも良いように思える。互いに似通った作品が混ざり合い、そこに当たる光が非現実的なものに仕上げている。これらの無名のインテリアは、社交場を想定して作られたものではなく、見つめられて交錯するためだけに存在するものだ。


Villa in the forest of Tateshina, Kazuyo Sejima, 1995. Photo: Luisa Labri

ルイザ・ランブリと話している時に、行間の味わいといった具合に、線と線の間から驚きー現代性の象徴である建物を映しとった写真ーが出現した。彼女のカメラはこれまで、インド、フィンランド、チェコ共和国、イタリア、日本での映像を収めてきた。そして、アイディアを生み出してきた歴史に残る建築家と対話してきたのだ。

この10年で、既に活躍してきたアーティストや、成熟した女性アーティストが急増するのを、皆が認めるようになり、女性のアートの時代として注目された。彼女が、観念的態度を示し悩めるヒーローだった80年代をすぎると、より個人的で抑制的な声によって形成された、女性的で新しいアートの見方が現れた。

建築を撮影することは、自分自身について語るためのただの口実として、ルイザは見ている。彼女は建築写真の伝統や、バーンドとイルダ・ベッカーが指揮する、アンドレアス・グルスキー、トーマス・ルフ、トーマス・シュトゥルート他が通った写真学校、デュッセルドルフ・スクールに代表される、特に60年代から現在に至るまでのドイツのリアリストによる写真の間をさまよっている。リアリストは、建築の中心的地位と技術的な便宜主義の削除を厳密に意図し、撮影された物体が、明確な画一性の下に隠された緊張感を示す方法を作り出す。

ルイザ・ランブリは国際情勢地図を作成し、トレースしている。彼女自身と世界の間に平行線を引き、そしてアイデンティティの存在しない各地の「ルポルタージュ」に彼女の居場所と彼女自身を再発見しようと努力している。

彼女のアーティストとしての物語は、1920マガジン・オブ・ル・コルビュジエ「レスピリット・ヌーボー」から始まった。彼女は、可能と不可能の間で生み出されるル・コルビュジエとの関係で行き詰まっていた。それは、ほとんど虚像の原動力を予期しての事だ。建築家には、身体的な限界があるが、ル・コルビュジエはそれを超えようと、工事現場の映像に干渉した。彼はもはや現実的でも身体的でも無かったのだ。建築は、アイディア、そして心理的なスペースとなった。

ルイザ・ランブリは、まず建築家を選び、それから建物を選ぶ。そこへ出向き、探訪し、ポイントやレファレンス、ディテール、そしてアングルを吟味して、撮影する。写真は、建造物と出会いルイザ・ランブリはル・コルビュジエ、アルヴァ・アアルト、ミース・ファン・デル・ローエ、ジョゼッペ・テラグニ、妹島和世と出会った。

彼女は、建築作品には取り組まないし、そうしているかのように見せ掛けたりもしない。ロラン・バルトがラテン語で「プンクトゥム」と定義した写真に関する決定的なプレゼントを再確認するために、建築物から出発したのだ。「連写からかすかに外れたもので、まるで実際に映し出しているものを超え、イメージが情熱をうつしているようだ。」 (“La Chambre Claire”, Einaudi, Turin, 1980).

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