ビジネス・アーキテクツ

PEOPLE

今月のカバーデザインを制作してくれたのは、昨年設立されすぐに日本を代表するウェブデベロップエージェンシーにまで成長した「bA(ビジネスアーキテクツ)」に所属する中村勇吾氏と代表の福井信蔵氏。彼のパーソナルウェブサイト 「YUGOP.COM」での実験的で美しいインタラクティブアート作品は、ご存じの方も多いだろう。最近の活動について、また彼の所属する「bA」とはどういう会社なのか?「bA」はどこへ向かおうとしているのか、勇吾氏と代表の信蔵氏にお話を伺った。


はじめに自己紹介をお願いします。

勇吾:中村勇吾です。「bA(ビジネス・アーキテクツ)」(以後「bA」)のデザイナーとして活動しています。個人的には「MONO*CRAFTS」というサイトを中心に様々な活動をしています。

信蔵:「bA」代表の福井信蔵です。個人サイトは、「VIEWON.NET」です。WDA1999に選ばれた「SHINZO.COM」は一旦閉じました。90年代ウェブデザインの墓標として(笑)またそのうちそのままで公開します。

デザインに興味を持つようになったきっかけは?

勇吾:高校生の頃にの建築を知り、建築やランドスケープの世界に興味を持ったのが最初のきっかけです。そこから様々な方面のデザインに次々と興味が移り、色々な紆余曲折を経て(笑)、今なぜかウェブの世界でデザインをしています。

YUGOP.COMの活動について教えてください。ウェブサイトではどのようなことをやっていますか?

勇吾:YUGOP.COM は僕の個人的なサイトです。仕事の合間にせっせと作っています(笑)。今現在のウェブで可能な、ビジュアルやインタラクションの表現手法を様々な角度から追求していくことが、このサイトのテーマです。様々な人が主宰しているデザインプロジェクト(GASBOOKTHE REMEDI PROJECT)などにも積極的に参加しています。

「bA」での活動について教えてください。そこでの役割はどのようなことですか?どのようなことをしていますか?

勇吾:「bA」で製作する様々なウェブサイトのビジュアルデザイン、インターフェイスデザインに関わっています。僕の場合は特にインタラクティブな要素が必要とされる場面での役割が強いですね。比較的大規模なサイトに関わる一方、映画のタイトルバックなどの仕事もしたり、と硬軟入り乱れた構成になってます。

信蔵:これは勇吾より僕が話した方がいいかな(笑)。「bA(ビジネスアーキテクツ)」は、その社名の通り、クライアントがビジネスを構築する時に必要とされるモノやコトをトータルにサービスする会社で、テクノロジーを使ったビジネスの構築と実装が得意です。サイトを構築する“ウエブデベロップカンパニー”という部分は確かに「bA」の業務なのですが、それだけではありません。昨年夏に僕が中心となってスタートしたという事や、勇吾が初期から参加したという事でウェブとかデザイン面に着目される事が多いのですが、サービス的にはもっと幅広く、戦略立案から企画・制作、もちろん開発まで、実装して結果を出すまで一貫してやってます。

スタッフは現在総勢70名。 コンサルティング会社、 広告代理店、大手アパレル、ソフトウェアメーカ、印刷会社、システム開発会社などから移籍してくれた人たち、また、音楽家もいますし、舞台美術やイベンター、イラストレーターや小説家など、もう本当に多岐に渡る才能が参加しているので、まるで猛獣サーカスみたいな会社です(笑)。だから、勇吾が言うように映画もやりますし、クライアントに雑誌自体を企画して実際に作ったり、ファッションブランドの広告やったり、プロモビデオ作ったり…と、ウェブ(最近の仕事は以下のリストで)だけじゃなく紙も映像も音楽も、豊富な経験を持った様々な分野の優秀な才能が一ケ所に集っているので活動範囲と守備範囲は相当幅広いです。

最近手掛けたのは、
http://www.nttdata.com
http://www.muji.net
http://www.muji.com
http://www.opaque.ne.jp
http://www.sony.co.jp/en/SonyInfo/dream/ci/en/
http://www.jp.atmckinsey.com
http://www.sony.co.jp/en/SonyInfo/dream/robocup/robocup2000/

「bA」のメンバーは、皆それぞれ個々のスタイルと能力を持っていますが、それが、ウエブデベロップカンパニーとしてのプロジェクトの制作過程にどのような影響を与えていますか?

勇吾:個人、あるいは少人数のデザインスタジオの中では、どうしても自分の能力や興味の及ぶ範囲でしか発想できない、閉じた状態に陥りがちですが、自分とは全く違う観点、スキルを持った人と日常的に接することで、発想の幅が格段に広がっていきます。これは僕が「bA」に参加してみて非常に良かったと思う点です。

中規模なウエブデベロップカンパニーで仕事をする上での良い点と悪い点を教えてください。多くのデザイナーが大/中規模のスタジオで仕事をしていますが、その点について何か言えることはありますか?

勇吾:比較的大きな規模の事務所では、個人的な興味、志向と、事務所内で担当する仕事の内容がなかなか重なっていかない、という悩みは良くありがちかと思います。仕事は仕事と割り切ってしまう、というのも一つの考えですが、そうではなく、自分は積極的に仕事を楽しんでいきたい、と思うならば、それを実現するための相応の努力とアピールが必要になります。まあ、これは個人でやっている人にも全く同様に当てはまることだと思いますが。

信蔵:「bA」のような中規模会社のいいところは、スタッフ全員のコンセンサスが図りやすいという点ですね。簡単に言うとみんなの意見が会社を動かしている部分です。誰かが「こんなことやりたいぞ」と言うと「ほいな」っていう感じで色々なスタッフが協力する。「こんなことやっても意味ないじゃん」という意見に皆が納得したら「じゃやめよう」ってすぐに方向転換ができる。そういう一体感でしょうか。もちろん事業計画を立てていますし四半期ごとの計画などもありますが、そういうも経営的な部分もスタッフ全員が共有して日々を過ごせるところでしょうね。

自分はグラフィックデザイナーだと思いますか?それとも、ウェブデザイナー?

勇吾:ウェブ上でデザインしてる、という点ではウェブデザイナーと言えますが、僕は通常言われるウェブデザイナー、という職能とはかなりズレている感じがするので、最近はそう名乗ってないです。うまいカテゴリが見つかりませんね。というか別に呼称は何でもいいです。(笑)

信蔵:僕はグラフィックデザイナーとしてのキャリアの方が長いので、ウェブデザインをやるようになってから長い間ウェブデザイナーと自称することに躊躇を感じていました。つまり、僕はただのグラフィックデザイナーでウェブデザイナーと名のるには全然至らない状態なのではないか…と、そういう躊躇です。最近になってやっとウェブページデザイナーからウェブサイトデザイナーになれた気がしてます。

バックグラウンドを教えてください。どのような教育を受けましたか?

勇吾:学生の頃は東大工学部の社会基盤工学科というところでランドスケープデザイン、建築、構造デザインなどを学んでいました。その後5年間、橋など大規模な構造物のデザインエンジニアとして働いた後、現在に至ります。というわけで、これまで僕の受けてきた教育と、現在の仕事とは何の脈絡もありません。グラフィックデザインやウェブデザインに関しては、殆ど全てネット上で見たり学んだりした経験がベースになっています。

信蔵:僕は大学では美術をやってました。教授と禅問答のようなコンセプト話を交しながらドでかいブロンズ彫刻とか作ってました(笑)。卒業してアパレルに勤務し、そこでマーケティングやブランドビジネスを学び、その後デザイン事務所に移籍してファッションブランドのアートディレクターをやりながらグラフィックとエディトリアルデザインを実務で学び独立。その後ウェブに出会って今に至ります。

インターネットの出現によって、デザインの教育は変わったと思いますか?

勇吾:デザイン教育の状況については良く知らないのですが、ここ数年、ネット上でも様々なデザインが展開するようになり、ウェブ上でデザインを学んだり、インスピレーションを得たりする機会は飛躍的に増え、その質も次第に高まってきていると思います。こういった状況の中で、従来からある学校のような場所では何を教育すべきなのか、少し考えていく必要があるかもしれないですね。

信蔵:僕も現状を知らないのですが、学校でのデザイン教育は、やはりモノの組み立て方を教え、読み解き方を示すべきで、モノの使い方だけを教える場ではないと思います。デザインは感覚が大切だと思うのですが、結局、そういう基礎がないと表現に至るアイデアが出せません。社会に出るまでの間に受ける教育で、その基礎をキチンと持たせるという方向にシフトして欲しいですね。

グラフィックデザインは、90年代初/中期の実験的なものからシンプルさに重点を置いた新しいもの、一種のネオモダニズムへと変化してきているようですが、この変化についてどう考えますか?

信蔵:メッセージの本質に誰もが着目し始めたということの現れと僕は思っています。足し算より引き算という感じかな。また、インターネットが、複雑なものを明快にというデザイン上でのコミュニケーション設計に影響を与えた可能性もありますね。言われてみれば、僕自身、自然とそういう意識を持っている気がします。

オンライン/オフラインともに現在のデザインの状況についてどう思いますか?

勇吾:ネット上に限って言えば、僕たちデザイナーは現在とても面白い時期の中にいると思います。主だった技術が出揃って、なおかつそれらが誰にでも使いやすくなってきているという状況の中で、さて、それらをどう一つの統合されたデザインとして昇華し、豊かなものとしていくか、という作業はまだまだ始まったばかり、という認識です。まだやっていないことは沢山あります。

今回SHIFTのカバーを制作いただきましたが、何をイメージし、どのように制作されたのでしょうか?

信蔵:さまざまな情報の集合から浮かび上がって来る「メディア」としての存在感、つまりSHIFT自体がメッセージを送ってくれている…と感じるので、それをそのまま表現コンセプトにしてみました。
カバーというと「SHIFT」っていう文字が並ぶって感じを作るのが普通なのかもしれませんが、僕が感じる「SHIFT」って、そういうタイポを組んで…という感じじゃなかったんです。整理しきれていないかもしれませんが何か感じてもらえたら…と、全然別のアプローチのコンセプトを出してみました。
今回のカバーでは僕と勇吾はディレクションに回り、実際に制作したのは、つい最近「bA」に参加した「FLASH EFFECT」のシライ・カズトシです。僕の後ろで「どーよ!」と吠えてますが(笑)彼も相当な猛獣で今後「bA」で暴れまくる予定です。音も「bA」のサウンドディレクターである栗原正臣がオリジナルに制作しました。彼はウェブ上でのサウンドのあり方を「bA」に来てからずっと研究している音楽家でブロードバンド時代の今後はおおいに活躍してくれることでしょう。

個人的にデザインにおいて影響を受けた人は誰ですか?またその理由は?面白いことをやっていると思うデザイナーを教えてください。

勇吾:
●影響を受けた人
ジョン前田:インタラクティブ、ということを最初に知るきっかけになった人。
デクストロ:ウェブ上で出会った中で真剣にこれは面白い、と思えた初めての人だった。その後自分もウェブで何か作りたいと思いはじめたので。
●面白いことをやっていると思うデザイナー
ジョッシュ・ウルム (http://www.ioresearch.com)
ジョシュア・デイビス (http://www.praystation.com)
ジョームス・ピーターソン (http://www.presstube.com)
マイク・ヤング (http://www.designgraphik.com)

信蔵:
●影響を受けた人
あえてあげるならアレクセイ・ブロドヴィッチかな。でも若い頃から現在まで、あらゆる面であらゆる分野から常に影響を受けているので「誰か」を特定するのはとても難しいです。重要なのは影響を受けた部分を自分で咀嚼できているかどうかですから。
●面白いことをやっていると思うデザイナー
ヨージ・ヤマモト

最後に、今後の予定やメッセージなどをお願いします。

勇吾:「bA」としては比較的大規模なサイトをこれから作っていくことになると思います。また、「bA」のサイトを正式にラウンチした暁には、メンバー同士の様々なコラボレーションワークもそこで展開していきたいと考えています。普段は中々出てこないような「bA」の濃ゆーい部分が見れるのではないんでしょうか。また、もちろん僕は個人的にも色々なプロジェクトに参加していきたいと思ってます。最近では今、仙台でやってるMOVEMENT展に参加しています。よかったら見に来てください。

信蔵:そうだね。クライアントのサイトばかりじゃなく早く自分たちのサイトを作らなくちゃなー(笑)。それはさておき、さっきも言いましたが、現在「bA」は、企業に向けて戦略を立て、企画開発し、制作し、運用をサポートするというビジネスの実装をトータルな業務にしています。同じ業務を行う会社は数多くありますし、株式会社という外側の形態は他社と同じですが、会社を構成している中身が他の会社とは大きく異なり、多種多様な才能が有機的に機能する集合体としての強みを持っています。また、「bA」は勇吾が言うように大きな仕事の経験を数多く持っていますし、今後もそういう大規模なプロジェクトのオファーが沢山来ていますし、仕事でのデザインと個人の色という側面を一致させていくプロジェクトもどんどん実現しようとしています。ですので新しい才能を常に募集しています。デザイナーも募集していますし、アシスタントやインターンも受け入れていますので、自分も「bA」に参加して暴れてみたいぞ!(笑)と思う人は、遠慮なく「bA」にコンタクト(info@b-architects.com) して、僕たちに会いに来てください。

Business Architects Inc.
住所:Gobancho YS Bldg. 12-3, Gobancho, Chiyoda-ku, Tokyo 102-0076, Japan
TEL:03-3512-2541
info@b-architects.com
http://www.b-architects.com

Text: Taketo Oguchi

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