ビジネス・アーキテクツ

PEOPLEText: Taketo Oguchi

中規模なウエブデベロップカンパニーで仕事をする上での良い点と悪い点を教えてください。多くのデザイナーが大/中規模のスタジオで仕事をしていますが、その点について何か言えることはありますか?

勇吾:比較的大きな規模の事務所では、個人的な興味、志向と、事務所内で担当する仕事の内容がなかなか重なっていかない、という悩みは良くありがちかと思います。仕事は仕事と割り切ってしまう、というのも一つの考えですが、そうではなく、自分は積極的に仕事を楽しんでいきたい、と思うならば、それを実現するための相応の努力とアピールが必要になります。まあ、これは個人でやっている人にも全く同様に当てはまることだと思いますが。

信蔵:「bA」のような中規模会社のいいところは、スタッフ全員のコンセンサスが図りやすいという点ですね。簡単に言うとみんなの意見が会社を動かしている部分です。誰かが「こんなことやりたいぞ」と言うと「ほいな」っていう感じで色々なスタッフが協力する。「こんなことやっても意味ないじゃん」という意見に皆が納得したら「じゃやめよう」ってすぐに方向転換ができる。そういう一体感でしょうか。もちろん事業計画を立てていますし四半期ごとの計画などもありますが、そういうも経営的な部分もスタッフ全員が共有して日々を過ごせるところでしょうね。

自分はグラフィックデザイナーだと思いますか?それとも、ウェブデザイナー?

勇吾:ウェブ上でデザインしてる、という点ではウェブデザイナーと言えますが、僕は通常言われるウェブデザイナー、という職能とはかなりズレている感じがするので、最近はそう名乗ってないです。うまいカテゴリが見つかりませんね。というか別に呼称は何でもいいです。(笑)

信蔵:僕はグラフィックデザイナーとしてのキャリアの方が長いので、ウェブデザインをやるようになってから長い間ウェブデザイナーと自称することに躊躇を感じていました。つまり、僕はただのグラフィックデザイナーでウェブデザイナーと名のるには全然至らない状態なのではないか…と、そういう躊躇です。最近になってやっとウェブページデザイナーからウェブサイトデザイナーになれた気がしてます。

バックグラウンドを教えてください。どのような教育を受けましたか?

勇吾:学生の頃は東大工学部の社会基盤工学科というところでランドスケープデザイン、建築、構造デザインなどを学んでいました。その後5年間、橋など大規模な構造物のデザインエンジニアとして働いた後、現在に至ります。というわけで、これまで僕の受けてきた教育と、現在の仕事とは何の脈絡もありません。グラフィックデザインやウェブデザインに関しては、殆ど全てネット上で見たり学んだりした経験がベースになっています。

信蔵:僕は大学では美術をやってました。教授と禅問答のようなコンセプト話を交しながらドでかいブロンズ彫刻とか作ってました(笑)。卒業してアパレルに勤務し、そこでマーケティングやブランドビジネスを学び、その後デザイン事務所に移籍してファッションブランドのアートディレクターをやりながらグラフィックとエディトリアルデザインを実務で学び独立。その後ウェブに出会って今に至ります。

インターネットの出現によって、デザインの教育は変わったと思いますか?

勇吾:デザイン教育の状況については良く知らないのですが、ここ数年、ネット上でも様々なデザインが展開するようになり、ウェブ上でデザインを学んだり、インスピレーションを得たりする機会は飛躍的に増え、その質も次第に高まってきていると思います。こういった状況の中で、従来からある学校のような場所では何を教育すべきなのか、少し考えていく必要があるかもしれないですね。

信蔵:僕も現状を知らないのですが、学校でのデザイン教育は、やはりモノの組み立て方を教え、読み解き方を示すべきで、モノの使い方だけを教える場ではないと思います。デザインは感覚が大切だと思うのですが、結局、そういう基礎がないと表現に至るアイディアが出せません。社会に出るまでの間に受ける教育で、その基礎をキチンと持たせるという方向にシフトして欲しいですね。

グラフィックデザインは、90年代初/中期の実験的なものからシンプルさに重点を置いた新しいもの、一種のネオモダニズムへと変化してきているようですが、この変化についてどう考えますか?

信蔵:メッセージの本質に誰もが着目し始めたということの現れと僕は思っています。足し算より引き算という感じかな。また、インターネットが、複雑なものを明快にというデザイン上でのコミュニケーション設計に影響を与えた可能性もありますね。言われてみれば、僕自身、自然とそういう意識を持っている気がします。

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