エチエンヌ・ミヌール

PEOPLEText: Jerome Lacote

僕がエチエンヌ・ミヌールに出会ったのは、パリ第8大学在籍中のことだった。グラフィックデザインを教えていた彼は、マルチメディアの創世記からインディペンデントのアートディレクターとして活躍している。ノーフロンティアと共同で制作したフロイトについてのCD-ROMや、ヒプティークとのコラボレーションで制作したプルーストについてのCD-ROMなど、カルチャーという分野で定評のあるプロジェクトを手掛けている。その彼が、新しいスタジオ・インキャンデセンスを設立。彼を招待し、話を聞いた。

インキャンデセンスについて教えてください。

インキャンデセンスは、グラフィックとニューメディアデザインの為のスタジオです。
エチエンヌ・オーギエ、ヤシーン・アルトカシ、エチエンヌ・ミヌール、アルノー・ダンゲルの4人のデザイナーと、プロダクトマネージャー、ピエール・ベンドリングがいます。主な活動は、ビデオ、ウェブサイト、CD-ROM、テレビゲーム、イベントでのアートデザイン&制作と、デジタルアートの刊行(日本の出版業者、デジタローグが指標となっています)の2つです。

最近に活動について教えてください。

現在は、様々なプロジェクトに取り組んでいます。イッセイ・ミヤケのウェブサイトが完成し、スウォッチのビデオの制作に取りかかるところです。他にも、リアルタイム3Dアプリケーション(VIRTOOLS)のパッケージデザインと大人用テレビゲームのインターフェイスデザインも制作中です。

インターフェイスをデザインする時のポイントは、映画「セブン」のようにプレイヤーを操ることを目的とし、まるでそれが精神病質者によって作られたかのように思わせることです。刊行物に関しては、第1弾CDを間もなく発売する予定です。また、この間日本に行ったのですが、その旅についてまとめた本を現在制作中です。旅行中に撮影した写真を収めたミニCD付きのブックレットになる予定です

影響を受けているものは何ですか?

国立高等装飾美術学校で勉強していた頃は、デザインの歴史やバウハウス、スイスのデザイン、そして特に エミグレエイプリル・グレイマンの作品に興味がありました。「ダイレクトフィルム」テクニック(カメラを使わずに、フィルム上で直接アニメーションを制作する技術)を使った、30〜40年代のレン・ライの作品のような実験的なアニメーションには興味があります。また、50年代初期に、初代IBMコンピューターを使って制作したホイットニー兄弟のアニメーション作品も好きです。

コンテンポラリーダンスやアートシーンからもインスピレーションを受けることがあります。シーンとスクリーン間で発見することのできる類似性は、私にとってすごく刺激になります。映画の予告編などからも刺激を受けます。ソール・バスなどといった人達の作品には、意味とグラフィックをブレンドしようという試みが感じられます。また、ハードコアミュージックを聞くことでエネルギーを得ています。

今日のデジタルグラフィックデザインについてはどう思いますか?

テクノロジーとグラフィックデザインの間には、常に密接な関係があります。グラフィックデザインは、コンテンツと技術的制約とのちょうど真ん中にあります。ルールとなるのは、斬新なものを生み出すためにその制約をうまく利用することです。今のところ、フラッシュやショックウェーブなどの技術によって可能となる双方向的なもの(少なくとも行動に反応できるもの)を使うことの可能性が最もエキサイティングだと思います。それらのテクノロジーのおかげで、反応できて自主性のあるグラフィックを入れることのできるステージのようにスクリーンをデザインすることができるのです。

3Dは、面白いけれどもその未熟さのために、今現在まだインターフェイスとしては広く使われていません。私が VIRTOOLSに制作したプロジェクト「SWIMTANK」でも分かるように、3Dはリンクと意味を作り上げることができるという点でエキサイティングなテクノロジーです。

日本に行った感想は?

グラフィックデザイナーなら一度は訪れるべき場所だと思います。日本にある全てのビジュアルに夢中になりました。ライフスタイルはヨーロッパと殆ど同じであるにもかかわらず、カルチャーや精神性がフランスとは全く違います。異国で素晴らしい経験をすることができました。

パリで今一番ホットなスポットを教えてください。

LE BATOFAR(セーヌ川、ベルシー橋)
ANATON ギャラリー(バスティーユ付近)
ARTAZART 本屋(83 Quai de Valmy 75010 Paris)

Text: Jerome Lacote
Translation: Mayumi Kaneko

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