おしゃべりロボット

HAPPENING

コンピューターが自分で考えることができるようになったら、彼等は何を話すのか?コンピューターが僕達と話ができるようになり、もっと賢くなったら、お互い何を話すのか?


3月25日まで、ブダペストのC3ギャラリー とカルチャーセンターでは、3人のハンガリー人による「お互いに話をするロボット」の素晴らしく雰囲気のあるインスタレーションが開催されている。

「SMALLTALK」のデザイナー(ゾルタン・マスザック、ロバート・ラフ、マートン・フェルネゼリ)によるこのインスタレーションでは、2つの巨大なスクリーンを設置し、ビデオプロジェクションにより後方からスクリーンが照らされている。暗い部屋の中に入ると2つのスクリーンが正面に見え、暗闇の中から緑色がかった顔がこちらを見つめている。その顔の主は、2人ともおそらく30歳後半から40歳代の男で、 タバコを吸い、暗い部屋の中から来場者をじっと見つめている。彼等は静かに疲れた様子でそこに存在し、まるで生きているかのようだ。

その効果は、楽しくもあり薄気味悪くもある。2つのおしゃべりロボットがこちらを見つめ、おしゃべりを始めるのをじっと待っている。そして、タバコを燻らせながら、その部屋を訪れる人がおしゃべりを始めさせてくれるのを我慢強く待っているのだ。

天井から、ポケットサイズの計算機のような物体がひもにぶらさがり、胸の高さでぶらぶら揺れている。

この物体にためらいがちに近付いて見てみると、それがタッチスクリーン付きのパームコンピューター装置であることに気付く。2枚のパースペックス(透明アクリル樹脂)に包まれてボタンが隠されているために、タッチスクリーンにのみ触ることができるようになっている。そこには9つの話題のメニューと矢印が表示されていて、メニューを上下に動かし、話題を選ぶことができる。
スクリーンに触って話題を選択すると、おしゃべりロボットが会話を始める。彼等が英語で大声で話し始めるとビデオスクリーンが白黒に切り替わり、各スクリーンの左下にはハンガリー語、右下には英語が表示される。この会話はまぎれもなく即興で行われているように聞こえ、同じ話題を選択しても、その時々で異なる会話が展開される。

「チューリングテストについて教えて」など、いくつかの話題を何度か試してみた。その2人の話し手は疑い深い傾向があり(少なくともこのプログラムがどうなっているのか半信半疑な人に対して)、お互いに悪口を言いながら最後には喧嘩を始める。
壁にスポットライトで照らされた宣言文から判断すると、このチューリングテストは、マスザック、ラフ、フェルネゼリの3人がこのエキシビジョンを展開する上で重要なインスピレーションとなったようだ。イギリス人数学者であり、コードブレイカーでもあったアラン・チューリングは、 1950年にこのテストについて、コンピューターを本当の意味で知能を持ったものにする方法として記述を残している。

チューリングの記述によると、この人工知能 (AI)が一度作られると、おそらく今世紀の終わり頃(すなわち、今日現在)までにはこのシミュレーションテストにパスすることができるようになるだろう、ということだ。
このテストは、コンピューターと人間をそれぞれ別の部屋に入れ、テキストターミナルを通してコミュニケートし、人間の審査係がそれを判断するというもの。1時間など一定時間が過ぎた後、出力されたテキストにより審査係がどちらが人間でどちらがコンピューターかの判断ができなかった場合、コンピューターが本当の人口知能を得たと言うことができる。
言いかえると、コンピューターが人間をだますことができた時、彼等が人工知能を得たということになる。

では、2つのコンピューター、または2つのコンピュータープログラムがあり、両者がお互いにおしゃべりをしている時、議題にのぼる疑問は、どちらがどちらをだましているのだろうか、ということである。

このインスタレーションを制作したデザイナーがハンガリー人であるにもかかわらず英語を選んだのは、ハンガリー語の語尾が難しく、ハンガリー語で挑戦するのが困難に思えたからだという。
ワイゼンバウムが1970年代に開発した初期のおしゃべりロボットELIZAは、 それと対話する人間の想像力を利用することができるという点で、今回のものよりも簡単だと言える。まず人間が会話のきっかけを与え、新しい言葉をコンピューターに与える。コンピューターは自分の文法構造にそれを当てはめ、対話者に言葉を返す。コンピューターは、人間が言ったことについて、知能的に聞こえるような質問を返すことができるのだ。

ELIZAは、「私は父親が嫌いなのです」などといった文章には、「それは何故ですか?あなたの父親についてもっと詳しく教えてください」などのように、説得力のある答えで対応する。

マスザック、ラフ、フェルネゼリの3人にとって、こういった対話は不可能だった。その理由は、会話をする両者がコンピューターによって生み出されるものだからだ。彼等の技術的挑戦は、もっと難しいものだった。会話をする両者が限られた言葉の中から文法的な文章をランダムに組み立てる時、どうやってリアルに聞こえる会話を継続させることができるのだろうか?

示唆に富んだ愛らしいインスタレーション「SMALLTALK」は、言葉の背後に思考があるのかについて良く考える前に、何を聞くべきなのか、という質問を投げかけている。実際、彼等はチューニングの有名なAIテストの価値を傷つけている。もし人間が会話の一部として参加していたら、人工知能の幻影を作り上げるのは、もっと簡単なことなのだ。

デザイナーが予期した通り、2人のおしゃべりロボットを知能的に会話をしているように聞こえさせるのは、1人の時よりももっと多大な時間と労力を必要とする。既にELIZAが70年代に何人もの人間達をだまそうとしたが、この2人のおしゃべりロボット達は、「私はロボットのふりをした人間のふりをしているプログラムです」などのウィットに富んだ台詞で、シンプルな旧式ELIZAよりは数少ない人達を楽しませている。

デザイナーが予期した通り、2人のおしゃべりロボットを知能的に会話をしているように聞こえさせるのは、 既に70年代に 何人もの人間達をだまそうとしたELIZAよりも多大な時間と労力を必要とする。この2人のおしゃべりロボット達は「私はロボットのふりをした人間のふりをしているプログラムです」などの気のきいた台詞を話すことができるにもかかわらず、シンプルな旧式ELIZAよりも多くの人達をだますことはできないだろう。

最も素晴らしい部分は、エキシビジョンの見た目だ。緑色をした物静かな顔、白黒の会話(会話をしている2人の背後のバックグラウンドで夜から昼へと素早く切り替わる)は、エキシビジョンを印象的でミステリアスなものにしている。

ブダペストを通る機会がある人は、是非訪れて自分で確かめてみてほしい。3月25日までの11時から6時まで、ブダ・キャッスル地区のある部屋で彼等は君の訪問をじっと待っている。タバコを吸い、会話の話題を与えてくれるのを待ちながら。

Text: Mark Griffith From Live Budapest
Translation: Mayumi Kaneko

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