「デフェネストレーション(窓外放出)」展

HAPPENINGText: Fuyumi Saito

サンフランシスコ6thストリートにある、旧ヒューゴ・ホテル。1988年から廃屋となっているが、その建物はサウスオブマーケット(SOMA)地区に未だ残る。通りを歩くと、その窓からはホテルで使用されていたバスタブやスタンドライトがひょっこりを顔をのぞかせている。まるで挨拶されているようで、思わず笑ってしまう。

建物はかつて、20年ほど前に、ある投資家が改修を試みたものの途中で資金が尽き、作業は中断。壁や天井は破られ、家具は破壊されたまま、手つかずの状態で数年がたった。もはやゴーストハウスと化した旧ホテルには、その後、無断居住者が出入りするようになった。彼らは壁に落書きや詩を残していった。

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Defenestration 2nd Floor Remnants, Mel Solomon, 12”x14.5”, Photograph
メル・ソロモンによる写真で旧ホテルの外観や中の様子も見ることができる。

この建物を見つけた彫刻家ブライアン・ゴギン、ビデオアーティストのルース・エックランド、画家のマキシーヌ・ソロモン、写真家のメル・ソロモンは、建物へアクセスする権利を得てインスタレーションを創るプロジェクトをスタートした。

今年、26年の歳月をかけてやっと、新たな施設(低所得者向けのレンタルユニット)へと生まれ変わることになったことを記念して、同じSOMA地区にあるギャラリー、アートハウスが4人の作家によるインスタレーションを展開した。旧ユーゴホテルが経てきた時間、空気、人々との出会い。彼らの作品からは旧ヒューゴホテルが紡いできた物語を感じることができる。

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窓から家具をはみ出させたインスタレーションは、ブライアン・ゴギンが放置され半壊状態の家具を使用し、100名以上のボランティアとともにアートのための寄付金で作った。ゴギンは見つけた物を組み合わせ、風変わりで刺激的な彫刻を西海岸で作り続けているアーティスト。リノベーションが中断され投げ出された歴史を表現しているのか、もしくは、家具達はこの再建のタイミングにホテルを飛び出そうとしているかのようにも見える。ギャラリースペースには、実際に施設に残っていた椅子が、折れ曲がった脚で今にもガラガラと落ちてきそうな角度で壁に吊るされている。

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