スモールトーク:おしゃべりロボット

HAPPENINGText: Mark Griffith

ワイゼンバウムのイライザ*は、それと対話する人間の想像力を利用することができるという点で、今回のものよりも簡単だと言える。まず人間が会話のきっかけを与え、新しい言葉をコンピューターに与える。コンピューターは自分の文法構造にそれを当てはめ、対話者に言葉を返す。コンピューターは、人間が言ったことについて、知能的に聞こえるような質問を返すことができるのだ。
*ジョセフ・ワイゼンバウムが1970年代に開発した世界初のおしゃべりロボット。対話型自然言語処理プログラムの一つで、チャットボットの起源となったソフトウェア

イライザは、『私は父親が嫌いなのです』などといった文章には、『それは何故ですか?あなたの父親についてもっと詳しく教えてください』などのように、説得力のある答えで対応する。

マスザック、ラング、フェルネゼリの3人にとって、こういった対話は不可能だった。その理由は、会話をする両者がコンピューターによって生み出されるものだからだ。彼等の技術的挑戦は、もっと難しいものだった。会話をする両者が限られた言葉の中から文法的な文章をランダムに組み立てる時、どうやってリアルに聞こえる会話を継続させることができるのだろうか?

示唆に富んだ愛らしいインスタレーションは、言葉の背後に思考があるのかについて良く考える前に、何を聞くべきなのか、という質問を投げかけている。実際、彼等はチューリングの有名なAIテストの価値を傷つけている。もし人間が会話の一部として参加していたら、人工知能の幻影を作り上げるのは、もっと簡単なことなのだ。

デザイナーが予期した通り、2人のおしゃべりロボットを知能的に会話をしているように聞こえさせるのは、既に70年代に 何人もの人間達をだまそうとしたイライザよりも多大な時間と労力を必要とする。この2人のおしゃべりロボット達は『私はロボットのふりをした人間のふりをしているプログラムです』などの気のきいた台詞を話すことができるにもかかわらず、シンプルな旧式エリザよりも多くの人達をだますことはできないだろう。

最も素晴らしい部分は、展覧会の見た目だ。緑色をした物静かな顔、白黒の会話(会話をしている2人の背後のバックグラウンドで夜から昼へと素早く切り替わる)は、本展を印象的でミステリアスなものにしている。

ブダペストを通る機会がある人は、是非訪れて自分で確かめてみてほしい。3月25日までの11時から6時まで、ブダ・キャッスル地区のある部屋で彼等は君の訪問をじっと待っている。タバコを吸い、会話の話題を与えてくれるのを待ちながら。

Smalltalk: Chatterbots Talk With Each Other
会期:2001年1月25日(木)〜3月25日(日)
時間:11:00〜18:00
会場:C3 Gallery
住所:Hermina út 22, H-1146 Budapest
TEL:+36 1 488 7070
https://www.c3.hu

Text: Mark Griffith
Translation: Mayumi Kaneko
Photos: Courtesy of C3 © the artists

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