茂木綾子

PEOPLEText: Chibashi


© 1996 Ayako Mogi / TYO Productions Inc

昔、あるアーティストと話をしていたら、現代は一作家一手法の時代だという話題になった。その作家としては、「自分は多様な手法を使って表現していきたい。」ということを言っていたのだが、意地悪な言い方をすれば多様な手法を使うということが、その作家の一手法には見えないだろうか。つまり現代の作家は、どうしても『その作家らしさ』を意識して、方法論の構築に励むことになる。もちろん僕はそのことに何も問題はないとは思うけど….。

茂木綾子という作家(と言ってもいいのかな?)は、そういった問題そのものを、ハナっから相手にしないようなとらえどころのないポジションで活動しているように見える。どこの世界からもズレているのである。したがって、メディアは彼女をプッシュしたくても何者かがわからない!とりあえず写真を取る人としてメディアには登場してきているので、観たことがある人も多いだろう。そんなスタンスの人をこうして文字で紹介するのは至難の業だけど、switch等の書評では、的を得た良いことが書いてあるので、茂木綾子を考えるのには非常にいい材料になるだろう。


© 1996 Ayako Mogi / TYO Productions Inc

茂木さんは 第5回写真新世紀公募で優秀賞(荒木経惟選)を受賞されて、現在 はサブカルチャー系の雑誌やCDジャケットなどでビジュアルアーティストとして活躍なさっているということですが、今回「in the couchというビデオ(20分)とブックレット(80P)で構成されている作品集を制作されましたね。プロフィールを拝見させていただきましたが、武蔵野美術短期大学グラフィック科と東京芸術大学デザイン科を両方とも中退しています。こうして話を聞くだけでも、茂木さんというのは何者なのかということがひどく気になるわけです。まず茂木さんは写真家なのか、映像作家なのか、広くヴィジュアル・アーティストということでいいのか。そんなところから話を伺いたいです。

私としては、カテゴライズされない事を望んでいるので…。写真家として仕事を依頼されることが多いけど、自分は写真家だとは思っていないし。う〜ん、ヴィジュアリストということにしておいて下さい。私は大学(東京芸大)では、映像を専攻していたんです。そこでは、もうすでにあるビデオ・インスタレーションばっかりで、結局アカデミックになってしまっている。じゃあ、すでにないものを作ろうとすると、それはダメだと言われてしまうんです。そんな経緯で辞めちゃったんです。


© 1996 Ayako Mogi / TYO Productions Inc

ダメって言い切られちゃうなんて凄いものがありますね。結局、アカデミックであったり、カテゴライズされたものの枠にはとらわれたくない。そういうポジションで活動していきたいと。

そういうことですね。私は内面から浮かび上がるイメージから作品を作り始めます。ロジカルに頭の中で構築する暇もなく、出て来ちゃたものを、インスピレーションでつなげていくんです。

では、ロジカルに観ようとしている人から誤解されるリスクも多いにありますね。

それはそれでいいんです。


© 1996 Ayako Mogi / TYO Productions Inc

何故発表するのか?どういう人に向けて作品を発表しているのか?なんて基本的な質問をしてもいいですか?

ええ。私が作品を発表するのは、自分というものはいつか(死んで)無くなっちゃうけど、物質として作品が残るということが大切に思えるんです。作品の作り方は構築的ではないし、カテゴリーが無いので、誤解されやすいかもしれませんが、私の様なマイナーなスタンスの人間がいることが、他の同じ感覚を持った見る人や作る人たちにとって刺激になればいいなと思います。

こんなことやってる人がいるんだ!みたいな!

爆弾になれるんだ!みたいな(笑)

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