ベイ・ビーツ 2002

HAPPENINGText: Fann ZJ

『シンガポールでは前代未聞の大規模オルタナティブ・ミュージック・フェスティバル』というキャッチコピーのついたベイ・ビーツ。これは、地元で活動する才能溢れるアーティストに、新しい形のプラットフォームを提供するというもの。エスプラネードで3日間に渡って開催されたこのイベントでは、アウトドアのステージが2つ、シンガポール市の端に設置された。シンガポール川と街全体を背景として見渡せる場所でのイベントだ。

お気に入りのバンドの登場まで、長い間待ち続けるファン達。彼らの熱狂が高まるのは当然のことだ。3日間の間にパフォーマンスを行ったのは、国内外から集まったアーティスト50組。ベイ・ビーツによって、エスプラネードは、いかにもパンクとロック愛好者という服装に身を包んだ人々で溢れ返っていた。

地元や海外からのミュージシャンを紹介しつつも、やはり地元のバンドが登場すると、観客の熱狂は最高潮になる。例えば地元でも有名なフィッシュタンク、フォース・ヴォミット、コンケイブなどが登場すると黄色い歓声が響き渡る。バンドとファンが一歩近付ける瞬間だ。自身のコンサートのような状態になっているパフォーマンスもいくつかあり、それにはもちろんアンコールだってあるのだ。海外アーティストのパフォーマンスもロックでハウス感たっぷりなものばかり。ブランツオン(USA)、サマーセット(ニュージーランド)、ブディストサン(日本)などの参加があったが、どのバンドも地元バンドと同様に受け入れられていたようだ。

イベント全体がパンク色一色なだけではない。日没後はその雰囲気ががらっと変わり、DJ達が登場する。イベントの第1日目はハウスがメインだったが、2日目、3日目は地元のドラムンベースのDJにスポットが当てられた。海外からのDJのパフォーマンスの後、これから始まる長い夜へと導くのが彼らの役割だ。チルアウト・ステージでは、その卓越した楽曲でデジタル(UK)とスタミナMC(UK)が主役を努めた。マーライオンと摩天楼が背後の暗闇の中に見える。それはまるで、世界が音楽のペースで動いているかのようだった。

アウトドアのイベントの場合、悪天候が一番の障害物である。しかし、ベイ・ビーツは例外だった。雨が降ってもムードが冷めるようなことはなく、返ってオーディエンスにとっては気分転換になっていたようだ。街はビートとリズムと共に生きているのである。

BAY BEATS
会期:2002年12月6日〜8日
会場:The Esplanade, Theatres on the Bay
主催:The Esplanade
企画:Awakening Productions
https://www.awake.com.sg

Text: Fann ZJ
Translation: Sachiko Kurashina
Photos: Fann ZJ

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