「ロン・ミュエク」展
HAPPENINGText: Alma Reyes
そして展覧会の中心部では、300平方メートルものギャラリースペースに広がる、圧倒的な《マス》(2016–2017年)が展示されている。ファイバーグラス、ポリエステル樹脂、合成塗料を用いて手作業で仕上げられた100点もの頭蓋骨の彫刻が、会場の空間に合わせて巨大な山のように積み上げられている。それぞれの頭蓋骨は人間の実物を遥かに超える大きさで、観る者はそれらを巨大な岩塊としてじっくりと観察することになる。

ロン・ミュエク《マス》(2016–2017年)ビクトリア国立美術館(メルボルン)蔵、2018年フェルトン遺贈 展示風景:「ロン・ミュエク」森美術館(2026年) 撮影:吉村昌也 画像提供:カルティエ現代美術財団
作品はひとつの巨大な「塊(マス)」として提示されているが、微妙に異なる色合いや骨のディテールは、それが個々人の集合体であることも示唆している。それらは、地上における人間の「死」と「生(存在)の儚さ」を静かに想起させる。ミュエクにとって、人間の頭蓋骨は美しさと強烈な意味を併せ持つ存在である。彼は次のように述べている。『人間の頭蓋骨は多義的な物体である。私たちがすぐにそれだとわかる、力強く鮮烈なアイコン。見慣れたものでありながら奇異でもあり、私たちは拒絶しつつも、同時に惹きつけられる。無視することはできず、無意識のうちに私たちは注意を向けてしまうのである』(展覧会カタログ「Ron Mueck」より)

ゴーティエ・ドゥブロンドによる高画質映像より、《チキン/マン》(2019–2025年)
フランスのフォトグラファーであり映画監督のゴーティエ・ドゥブロンドが手がけた2本の映像作品と写真群は、ロンドンおよびイングランドのベントナーにあるミュエクのプライベート・スタジオへと来館者を誘う。模型、ドローイング、工具、絵の具で満たされた空間は、作家の制作プロセスや環境を物語っている。映像作品《Still Life: Ron Mueck at Work(スティル・ライフ:制作中のロン・ミュエク)』(2013年)や《チキン/マン》』(2019–2025年)は、ミュエクが彫刻し、型を取り、鋳造し、表面の質感を高めていく姿、そしてカラスと共に一息入れる瞬間などを的確に捉えている。
展覧会の終わりを迎える頃、私たちはミュエクの並外れた才能と、人間の解剖学的構造、そして感情に対する生き生きとした解釈に、深い畏敬の念を抱き、抗いがたい引力に魅了され、心が満たされる。私たちは、人間の精神の核心について思索を巡らせながら、戸惑いや脆さ、そして受容といった感情が混ざり合った、魂を揺さぶられるような余韻とともに会場を後にするのだ。
ロン・ミュエク
会期:2026年4月29日(水)〜 9月23日(水)
開館時間:10:00〜22:00(火曜日17:00まで、ただし8月11日と9月22日は22:00まで)
会場:森美術館
住所:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー 53階
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)
https://www.mori.art.museum
Text: Alma Reyes
Translation: Hoshino Yoshihara
Photos: Courtesy of Mori Art Museum, Tokyo





