エクストラウェグ
PEOPLEText: Victor Moreno
「セヴェランス」でのあなたの仕事は国際的な成功を収め、エミー賞の受賞にもつながりました。ベン・スティラーとそのチームとの共同作業はどのようなものでしたか?
素晴らしい経験でした。最初から彼らはクリエイティブな発想にオープンでしたし、私に実験することを促してくれました。私がコンセプトを自由に練った後、番組の心理的なトーンに合わせて調整するという作業の繰り返しの中で、私の創造的な取り組みが、シリーズの視覚的な物語を形作っていく上で重要な役割を果たし、このコラボレーションが嘘偽りのない協力関係のように感じられました。
ベンのナラティブ(物語)とビジュアルのバランスを取るアプローチは、このプロセスを協力的でありながら、刺激的なものにしてくれました。
Severance Official Intro Title Sequence 2022 / Credits / Opening 4K ( Apple TV+ )
「セヴェランス」に関する彼らのビジョンと、ご自身の制作方法はどのように両立させたのでしょうか?あなたのこれまで通りのアプローチと比較してみるとどうでしょうか。
とてもやりがいのある挑戦でした。彼らが設定した物語という枠組みがあるため、ある程度の制約の中で考える必要がありましたが、シュールなビジュアルで自由に実験できたことで、私自身の独創的な表現を保つことができました。自分らしいビジュアルのスタイルを崩さないようにしつつも、展開していく物語に合うように作業を調整する必要がありましたので、その点は普段とは異なりましたね。
制作過程は非常に協力的で、常にアイデアの交換をしながら進められたので、最終的には双方のクリエイティブな世界が融合したような仕上がりになりました。
このプロジェクトにおいて、技術的な映像制作の流れはどうでしたか?
私はシミュレーションに Houdini(フーディニ)、モデリングとアニメーションに Cinema 4D(シネマフォーディー)、コンポジットに After Effects(アフターエフェクツ)を組み合わせて使用しました。作業の大部分は自分で行いましたが、専門的な部分についてはフリーランサーと共同で作業しました。プロダクションのカンパニー3が最終的なカラーグレーディングを担当し、作品に必要な、洗練された映画的な質感が加わりました。
Season 2 – Intro Title Sequence 2025 / Credits / Opening 4K ( Apple TV+ )
「セヴェランス」シーズン2では、脳内を歩くような体験がどのようなものかを探求したい、という話を読みました。それについてもう少し詳しく教えていただけますか?
はい。私は心の複雑さや多層な部分を深堀りしながら、視覚的な表現を作りたかったのです。脳の経路や、移りゆく思考、そして記憶の中を歩くことはどのようなものなのか、想像しました。それは登場人物の心理状態と内的な葛藤のメタファーでもありました。これらの抽象的な概念を視覚的に具体的なものに落とし込むのが難題で、私は超現実的なイメージを使って、心の流動性と混乱を捉えようとしました。
出演者の演技の要素をビジュアルに取り入れるために、俳優のどなたかと話す機会はありましたか?
私たちは俳優の顔をスキャンし、彼らの3Dモデルを用意しました。その他のビジュアルは、参考文献に基づいた多くの3D制作を行い、特にニューヨークの現場を訪れた際には、俳優たちと何度かリアルタイムで話し合いながら進めました。
2022年のエミー賞のイベントでは何人かの俳優と直接会う機会があったので、彼らの演技とビジュアルをより深く結びつけることができました。
「セヴェランス」はあなたにとって大きな節目となり、エミー賞をもたらしました。この成功はあなたのキャリアにどのような影響を与えましたか?
とても光栄なことで、この受賞によってブランドや映画監督、スタジオからの関心を高まったことは確かです。知名度の高いプロジェクトでコラボレーションをしたり、革新的で大胆なビジュアルストーリーテリングを重視するチームと仕事をする機会が増えました。それがモチベーションになり、さらに刺激的で挑戦的なプロジェクトに取り組むよう私を後押ししてくれました。
現在取り組んでいること、または計画していることで、わくわくするようなことはありますか?
現在、心理的なテーマと人間の経験を探求する一連の3Dアニメーション作品に取り組んでいます。また、ファンやコレクターが私の作品に新しい形で触れることができるよう、自身の商品ラインを開発し始めたばかりです。これらのプロジェクトは非常にやりがいがあり、機が熟したら世界に向けて共有するのが楽しみです。
映像制作に関連しまして、あなたは創作活動にAIツールを取り入れていますか?もしそうなら、どのようにご自身の工程にフィットさせていますか?
完成品においてはAIを頼っていません。私はアニメーションを専門としているため、特定の動きや微妙なアニメーションのニュアンスを捉えることに関しては、AIには難しいものになります。過去にAIを試したことがありますが、まだ私のビジョンと完全に一致させることはできていません。アセット制作やレンダリングなどの特定の作業にはAIツールを使用し、作業プロセスのスピードアップを図っていますが、私の作品が目指す映像表現の深みにはAIには欠けていると今でも考えています。私にとってAIは、技術的な面を効率化するためのツールの一つであることに変わりはありませんが、私の芸術的なイメージの根幹にある特有の味わいや深さを保つために、最終的な成果物に対するクリエイティブ面は、常に私自身で維持管理しています。
AIの生成するビジュアルがより高度になるにつれて、この業界は今後数年間でどのように進化するとお考えですか?
急速に進化しており、AIは今後も制作の効率化に大きな役割を果たすでしょう。ですが、私は人間の創造性がその中心にあり続けると信じています。AIは技術的な側面で役立ちますが、作品にビジョンや感情、そして真実味をもたらすアーティストのニーズに取って代わることはありません。
ご自身の今後数年間に関しては、よりストーリーテリングや、映画・短編の監督業へと移行していくのでしょうか、それとも3Dデータやテクスチャなどのアセット制作に情熱を燃やし続けるのでしょうか?
そうですね。今のところ、アセット制作へ情熱は変わりありません。監督やストーリーテリングは確かに将来的に取り組むことではありますが、私はそれらのストーリーを伝える視覚的な世界を作り上げるプロセスを楽しんでいるので、どちらに対しても常にオープンでいたいです。
これまでに作品を展示したことはありますか、それとも将来的にやってみたいですか?また、何らかの形で作品販売はしていますか?
いくつかのショーで作品を展示したことがあり、これからさらに多くの展示を計画しています。また、ファンが私の作品を新しい形式で体験できる製品ラインを含め、コレクター向けに新しい作品をリリースするアイデアも検討しています。今後の最新情報にご期待ください!
Text: Victor Moreno
Translation: Hoshino Yoshihara




