テレンス・コンラン モダン・ブリテンをデザインする

HAPPENINGText: Alma Reyes

英国のモダンデザインは、19世紀のアーツ・アンド・クラフツ運動以来、長い道のりを歩んできた。ウィリアム・モリス、チャールズ・レニー・マッキントッシュ、マリー・クワント、ノーマン・フォスターに至るまで、英国はデザインの革新と創造性の最前線に立ち、伝統を再構築し、現代性を人々の生活に浸透させてきた。

この20世紀を代表するデザインチームに加わったのが、世界的に有名なテレンス・コンラン卿である。コンランは、家具、食器、テキスタイル、ホームアクセサリー、その他の実用品に「Plain, Simple, Useful(無駄なくシンプルで機能的)」という明確な哲学を打ち出し、ライフスタイルショップ「ハビタ」をオープン。さらに、自身の帝国ともいえるレストラン事業でイギリスの食文化を牽引し、モダン・ブリティッシュと称される新しい料理スタイルをイギリスの食文化に定着させた。また、世界に先駆け、ロンドンにデザイン・ミュージアムを設立してデザイン教育を向上させ、デザインブームの火付け役にもなった。


コンランと彼がデザインした「コーン・チェア」、1952年撮影、レイモンド・ウィリアムズ・エステート蔵 Photo © Estate of Raymond Williams

東京ステーションギャラリーでは、「テレンス・コンラン モダン・ブリテンをデザインする」展が、来年1月5日まで開催されている。この回顧展は、デザイナーであり起業家でもあるコンランのサクセスストーリーを記録した日本初の展覧会で、第二次世界大戦後、コンランがデザイン業界で頭角を現すまでの軌跡、ハビタザ・コンランショップの設立、再生建築プロジェクトなどを紹介。彼がパターン・デザインした食器やテキスタイルなどの初期プロダクト、家具デザインのためのマケット、ショップやレストランのためのアイテム、発想の源でもあった愛用品、著書、写真、映像など300点以上の作品や資料が展示されている。


ザ・コンランショップの紙袋、1980年代、デザイン・ミュージアム/テレンス・コンラン・アーカイヴ蔵 Courtesy of the Design Museum

1948年にセントラル・スクール・オブ・アーツ・アンド・クラフツ(現ロンドン芸術大学セントラル・セントマーチンズ校)に入学したコンランは、ポップ・アートの先駆者の一人であるエドゥアルド・パオロッツィに師事し、テキスタイルデザインを学んだ。学生時代、バウハウスやアーツ・アンド・クラフツ運動から多大な影響を受け、デザインはコミュニティ全体が利用できるものであるべきだと教えられた。21歳で卒業後、デザイナーとして独立。


コンランのパターン・デザインによるディナープレート「チェッカーズ」、1957年

コンランがデザイナーとして頭角を現したのは、消費文化を加速させた第二次世界大戦後の英国で、ブリティッシュ・ポップ・アートが台頭していたタイミングだった。1951年に開催されたフェスティバル・オブ・ブリテンが「変革の道標」とされ、英国の芸術、工芸、デザインを再構築したのと時を同じくして、コンランの独創的なテキスタイルや食器のパターンは、大きな注目を集めた。展示されているディナープレート「チェッカーズ」(1957年)は、グレー、イエロー、モスグリーンを基調とした幾何学的な形と抽象的なフリーハンドのドローイングを用いている。同様のモチーフは、吊り下げ式のテキスタイルや洗練された家具にも見られる。

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