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アイラン・カン展「内なる本棚」

HAPPENINGText: mina

クレマチスの丘(静岡県・三島)にあるヴァンジ彫刻庭園美術館で、2010年2月20日〜5月9日まで「アイラン・カンー内なる本棚」が開催されている。最近では「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ 2009」にも参加している彼女は、韓国で生まれ育ちカントの西洋思想に慣れ親しむと、自らのアイデンティティーを模索するように1999年から「デジタル・ブック・プロジェクト」を開始。今回の企画展でも会場に足を運んだアイラン・カンは、その時に得たインスピレーションなどを反映させた200冊の本のタイトルを新たにセレクトしたという。

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Photo: Sotaro Yamamoto, Courtesy of Yumiko Chiba Associates © Airan Kang

本というモチーフをこれまでの作品に取り上げてきた経緯については、1997年からポジャギという韓国の風呂敷で光る本を包むインスタレーションで、抑圧された知性と解釈され、ジェンダー的とみなされていたものの、現在では、フェミニズム的な問題意識を本人は持っていないという。それ以前は版画を制作していて、すでにあるカタチを引用するなどといった、複製芸術的な作品特性を持っていたため、『そういう意味で彼女にとって、版画と本は共通項があるのかもしれない』と学芸員は話している。

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Photo: Sotaro Yamamoto, Courtesy of Yumiko Chiba Associates © Airan Kang

今回の企画展では全体の作品を通し、実際にある本のサイズと同じ原型を透明樹脂で型抜きし、LEDを使って本の内側から発光するようにつくられている。まず最初の作品は、ヴァンジ彫刻庭園美術館の入り口すぐ側に展示され、LEDでカラフルな色合いを放つ本が5〜6冊平積みで積み重ねられて本の束の部分の側面には電光掲示板の装置を配置している。この作品は本を重ねているように見えて、実は全ての本が配線で繋がっていて、本の向きは微妙に位置を変えられるようになっている。電光掲示板からはシェイクスピア「ソネット第18番」から『君を夏の日にたとえようか』というような詩が流れ続けている。劇作家であるシェイクスピアは「ロミオとジュリエット」なども書いているが、個人的な詩を書いたソネットも実は隠れた人気があると言われている作品だ。

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