「第三の手」マウリツィオ・カテランとストックホルム近代美術館コレクション

HAPPENINGText: Victor Moreno

「ザ・スクエア」と名づけられた部屋で、カテランは、13万点を超える美術館の膨大なコレクションの中から作品を厳選し、壁面に所狭しと展示した。その中には、アンディ・ウォーホルの作品など、めったに展示されることのない注目作も含まれている。この空間では作品間の上下関係をなくし、アートを共同で祝う感覚を呼び起こすことを目的としている。

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Installation view with full-sized copy of Maurizio Cattelan’s monumental sculpture L.O.V.E. Photo: My Matson/Moderna Museet © Maurizio Cattelan 2024

部屋の中央には、カテランの有名な彫刻《L.O.V.E.》(2010年)が聳えている。この中指を立てた(それ以外の指はカットされている)巨大な拳は、ミラノの証券取引所の前にあるアッファーリ広場に展示されている大理石の彫刻のレプリカで、資本主義に対する反抗であり、金融行政への挑発である。オリジナルは、ミラノ王宮でのアーティストの回顧展のために2010年に制作され、当初1年間の設置予定であったが、現在も恒久展示され、観光名所となっている。


Maurizio Cattelan, HIM, 2001 © Maurizio Cattelan 2024, Roy Lichtenstein, Finger Pointing, 1973 © Roy Lichtenstein. Photo: My Matson/Moderna Museet

この展覧会で最も印象的なのは、「US(私たち/アメリカ)」と題された部屋だろう。ここでは、来場者は鮮やかな赤い壁と床に包まれる。中に入ると、目の前の壁に掛けられたロイ・リキテンスタインの代表作《指差し》(1973年)に敬意を表しているかのように、アドルフ・ヒトラーをモチーフにしたひざまずく少年の蝋人形が背後から見える。《HIM(彼)》(2001年)と題されたこの彫刻の手は祈るように組まれ、視線は従順なしぐさで上に向けられている。リキテンシュタインの《指差し》は、第一次・第二次世界大戦中に使用されたアメリカ陸軍の「アンクル・サム」募兵ポスターから拝借したイメージである。

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Maurizio Cattelan, Kaputt, 2013. Photo: My Matson/Moderna Museet © Maurizio Cattelan 2024

展示の最後には、5頭の馬の胴体が壁に吊るされ、後ろ半分だけが見える。《カプート(破滅)》(2013年)と名付けられたこのインスタレーションは、ナチス・ドイツによるユダヤ人虐殺を世界で初めて記述したイタリアの作家、クルツィオ・マラパルテの同名小説へのオマージュであり、第二次世界大戦中、湖に飛び込んで火事を逃れたが、湖は突然凍りつき、頭を水面上に出した馬たちは閉じ込められて死んでしまった馬の一団を表現している。インスタレーションは、その氷の下の光景を表現している。

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