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ラング

PEOPLEText: Noriyuki Abe

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© Lung

10代の頃、どんなことを吸収したのですか?

主にマスターベーション、アート、ノイズの録音。いつもバンドでやりたいと思っていたけど、すぐにその機会が無かったのが良かったと思っている。主にレコーディングで実験したりちょっとひどい絵を描いたり、実際今とほとんど同じなんだ。唯一の違いは、今は時々そういったことを話す機会があるということくらいかな、ただの趣味の話なのにね。10代の途中から後半にかけてはヘビーメタルにはまった時期もあった。ヘビーメタルにアカデミックに取り組もうと思って沢山本を読んだけど、ヘビーメタルと思考することはミックスできなくって、功を奏さなかった。今もその考えは変わらないよ。もしあなたがヘビメタにはまっているなら他には何もしていないだろう。振り返ってみると本当に暗い時期だったな。

覚えている中で最高だった時期は、僕が15か16歳だった夏で、ドラムをレコーディングし、4トラックカートリッジで音を作っていた頃。6週間ぐらい母親以外の顔を見なかった程だった。そのときの感覚をまた試して、持ち続けたいと思っているんだ。なぜなら学習以外の何物でもないから。すぐにクライアント、バイヤーが現れ、締切が設定され、仕事になる事は、長い目で見ると自分に有益ではない。システムから逃れたり、賢くなるためではなく、そういったやり方が苦手だっただけ。ただ一つ学んだのは、同じことは繰り返さないということ。だから理由のないものを作ること、ギャランティのために作らないことをいつも目指しているし、これが2016年に達成したいことなんだ。誰にも見えないもの、聞こえないものは多くの人にとってベストなんだ。いつも何かを考えたり、何かを作っていられる牢獄にいる人がうらやましいと考えたことがあるよ。もしお金があったら牢獄をつくって誰かに食べ物をドアの下から渡してもらいたい。片方の壁には大きな穴を作って、豆腐バーガーが通る穴をあける。時々欲しくなるからね。

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© Lung

今興味のある人、アート、その他のものを教えてください。

音楽で言えば、フットワーク音楽(ドラムフィル、トムドラム、クラップ、スネアを多用するシガゴ発祥の音楽スタイル)を買うことが多いよ。これまで聴いてきた音の中では一番ばかばかしいというのが近いかもしれない。僕は長年ゲットーテックとジュークの大ファンだけど、初期の未来的なサンプルの試作を具体化した最新のサウンドはまさに全てが最高だった。格好良くはなく、深い考えのない無謀なサンプル以外の何物でもない。この音でダンスはしないから、このジャンルを聴く理由はたぶんコアなファンたちとは違うと思う。好きな理由は、僕が絵で描こうとしているものと同じものを具現化しているからだと思うんだ。サンプルをロードし、沢山の3分間のサウンドでそれを一杯にするまでMPCを叩きまくる。100ものジングルがスピードアップして小さく刻まれる。シュトックハウゼンが切り刻まれて、アマゾンのウェアハウスに区画されるように。もしくは音飛びしちゃう90年代のジャズのCDのように。くだらないんだけど、クレバーだよ。

去年から、友人とのハイキングにはまっている。ちょうど彼から電話があって、3か月間いたモンゴルからちょうど戻るところだった。彼には精神を具現化するための安定したインスピレーションがあり、くだらないんだけど、才気がある。本当にフットワークが軽く、僕らは氷山を上ったり、イギリス中を歩いたよ。彼は慎重に計算したばかな行動で常に僕を驚かせ続けるんだ。次は渡航可能な東側からネパールに行く計画をしているよ。

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© Lung

先週は、少年時代に戻ったみたいに、毎晩寝る前に沢山のお笑いを見た。1度でも笑った事があったか分からないけど、パフォーマンスのプロセスとシステムを観察するのにはまっていたんだ。夜更かしして、一晩に何人かのお笑いを見るのが面白い。技有りなもの、無しなものを同時に見ることになる。お金をネタにしているときの演技に不安が垣間見えたり、エンターテイメントの変わった要素やちょっとむずむずした感じが分かってきた。たぶん大部分は、極めて不自然であることに興味を持ったんだと思う。でも彼らはオチへもっていく流れを隠し、いつも成功したように見せる。「僕はテーブルを作ったが、家に持って帰るには長すぎた!」なんて。僕は一度も作ったことがないし、たぶんこの先も作らないだろう。

読者に向けて何かコメントをお願いします。

僕たちはみな死に向かっているんだ、気取る必要はない。
僕が軽薄なことを言っても、それで判断するのはやめてくれ。

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Main visual of Lung Exhibition “Night Pig Lays Eggs”, CALM&PUNK GALLERY,Tokyo © Lung

そして…最近「ザ・コミック・アブストラクション・ムーブメント」という言葉を聞きましたが、ご存知ですか?ただちょっと気になったのですが。

あまり知らないな。でも想像するに、切り刻まれたカートゥーンのことかな。ムーブメントやジャンルには詳しくないよ。図書館のカードも見つけられないくらいなんだから。ここ数十年、非常に多くの人がコミックやアニメーションを素材として作品を作っている。しかし今は、よりひねりを加えた新しいグラフィック、アートが娯楽となりつつあり、それは自然な流れのように感じる。それは影響による影響というか、つまり伝統的にコミックは現実からちょうど1歩離れたところにあり、現実が反映された言葉も全てそこに揃っている。深く見ていくと、最も不思議なエンターテインメントの形だ。ルールがあり、コミックが最初に現れてから何十年も変わらずそれは守られ続けている。ちょっと不気味な世界だね。最近は、カートゥーンを含む多種多様なコンセプトやレイヤーを山のように重ねて更に抽象的なグラッフィク表現を試みるアーティストや、そういったコンセプトのアートブックもあるよね。見るのがエキサイティングだし、1部のあまり心を掴まれないものでも参考やレッスンの一種としてそれらを見るのは面白いよ。様々な塊と一緒に海に投げ込まれたゴミが、陸を形成して最終的には名前が与えられてしまうように、沢山あればそれ自体で作品となる。時々、60年前の伝統的なアニメーションを見るけど、新しいバージョンと比べると、どこか悪い場所からやってきた、より毒っぽく、奇妙なものにも感じるよ。。どこかプロに聞いてもらうか、最初の質問で聞いてくれれば良かったな。あまり気分が良くなくなってしまった…。

Lung個展「NIGHT PIG LAYS EGGS」
会期:2016年10月15日(土)~30日(日)
時間:12:00~19:00(月曜日休廊、30日のみ開廊)
オープニングレセプション:10月14日(金)19:00~22:00
会場:CALM & PUNK GALLERY
住所:東京都港区西麻布1-15-15 浅井ビル1F
TEL:03-5775-0825
入場無料
https://www.calmandpunk.com

Text: Noriyuki Abe
Translation: Satsuki Miyanishi
Photos: Courtesy of the artist, © Lung

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