東南アジア映画祭 2014
近年、私たちは国際的なものから地域的ものも含め、東南アジアのデザインやアートのイベントに注目している。近く公開される東南アジアのビジュアルアートを専門にしたシンガポール国立美術館のオープンに向けて、東南アジアは中心的な場所となるべく本腰を入れているようだ。東南アジア映像祭2014もその対話の広がりの一部だ。
4回目の開催を迎える今年の映像祭はシンガポール美術館8Qのムービング・イメージ・ギャラリーで催された。東南アジアに属する11カ国中の7つにスポットを当てた映像が持ち寄られ、視覚や映画的なものばかりではなく、心に迫る映像という媒体とそのレトリックは、多くの議論の的となった。20の上映の中から半数は、上映後の映像作家とのディスカッションの機会が設けられており、鑑賞者が作品制作や映画が取り上げる問題に対する制作者の意図や理解についてより深く触れることができる。
Film still from Concrete Clouds by Lee Chatametikool
リー・チャータメーティクンの「コンクリート・クラウド」は、私たちがグローバル社会における隣人とどれくらい密接に関わっているかということを想起させる。1997年のアジアの経済危機に時代を巻き戻し、二人の兄弟にまつわる二つの平行したストーリーを通して、私たちは家族が直面する闘争の悲しい事件を目にする。物語に登場する見捨てられた高層ビルと川辺のコンドミニアムには、我々に幸せをもたらしてくれものと、大きな負担とが同居するのだ。家族の重いテーマである愛や思い出が、タイのミュージックビデオ(字幕付き)に乗ることで軽妙なトーンで提示され、経済下降がもたらす過酷さの最中へと私たちを引き入れる。
Production still from Shakespeare Must Die by Ing K
イング・ケイによる「シェイクスピア・ マスト・ダイ」はシェイクスピアが1606年に発表したマクベスをもとにした作品だ。イング・ケイがタイの文化にあわせた解釈で家族、価値、汚職、関係と精神世界への理解を教科書の中心的部分に照らしあわせた。タイ語に翻訳されたが、作品はタイが現在直面している政治的な激動と不満への暴動を反映しているように見受けられる。芸術において、演劇や映画は人生の現れだが、シェイクスピア・ マスト・ ダイはあまりに深く反映しすぎたのかもしれない。そのためタイ本国では上映が禁止された。
Film still from Gaddafi by Panu Aree, Kong Rithdee and Kaweenipon Ketprasit
ドキュメンタリーはただ何かを反映するだけではなく、誰かの名前を暗示する記録だ。ドキュメンタリーが、アジア諸国が直面する問題の核心にふれることとなった。パーヌ・アーリー、コン・リッディー、カウィーニポン・ケットゥプラシット共作の「カダフィ」は、仏教徒が多くを占めるタイの社会で、イスラム教を取り上げている。元リビアのリーダー、ムアマル・カダフィの名をとって名づけられたモハメド・カダフィはタイのイスラム教徒の学生で、実父の英雄の失脚にまつわる争いに加担している。果たして名前は単なる名前に過ぎないのか。
今年の東南アジア映画祭はシンガポールとアジアの最先端の作品の多くの初演をもたらし、私たちに東南アジアの豊かさと多様性を再確認させてくれた。また鑑賞者は東南アジアの鼓動を感じさせるだけではなく私たちが何者であるかや、どのような時代に生きているのかを直接感じられたはずだ。
Southeast Asian Film Festival 2014
会期:2014年4月11日(金)~5月4日(日)
会場:Moving Image Gallery, Singapore Art Museum at 8Q
住所:71 Bras Basah Road, Bras Basah, Singapore
TEL:+65 6332 3222
https://www.singaporeartmuseum.sg
Text: Fann ZJ
Translation: Akari Otomo
Photos: Courtesy of the Moving Image Gallery, Singapore Art Museum at 8Q