川俣正「コレクティブ・フォリー」
「コレクティブ・フォリー」は著名な日本のアーティストである川俣正(1953~)の構想から生まれた巨大な木製のタワーだ。東京藝術大学の元教授である川俣正は、現在パリ国立高等芸術学院で教鞭を振るっており、また極めて重要な国際的なアートイベント(ヴェネツィア・ビエンナーレ、ドクメンタなど)にアーティストやアーティスティック・ディレクターとして参加している。
彼はその不安定な様相のインスタレーションによって世界中にその名を知らしめていて、今にも崩れそうな刹那的な建造物は構造と破滅の間を行き来するよう。これらの作品は、人々が参加でき、環境を破壊せず持続できるという指針に従ってそれらが接する環境について深く考えさせ、また建築の領域と都市生活や社会の動き、情報、社会学、歴史を探り混ぜ合わせるためにアートの境界線をなくしたいという作家の願いをはっきりと表している。
川俣正によるこの新しいパリ風の創作物は、まるで一つの生命体のようにパリの公園であるラ・ヴィレットの草原に育っていくもので、2013年の7月末までで最大21メートルの高さに到達している。このインスタレーションは徐々に解体されながら8月いっぱいまで続く。生態系に優しいこのタワーの材料は、環境保持に即した開発に関する規則に基づいて人の手を入れている森から伐採されたことが公式に認定されている。取り壊された後の木材は手数料を取って木をリサイクルする団体、エマウス・ジロンド・アソシエーションに送られる。
6月1日から来場者に開放され、タワーに登ることで今までにない高さからラ・ヴィレットと周囲の景色の新たな姿を眺めることができる。常に変化し続けるこの進行中の作品は鑑賞者と作家及び彼のチームの働きを繋げた成果にふさわしく平和で親しみのこもった空気を作り出した。
作品名が示す通り、このコレクティブ・フォリーはいわばグループワークであり、子供から若者や大人、好奇心旺盛な来場者たち、アートや建築の愛好家までを結びつけるものだ。タイトルの2節目にあるフォリー(仏folie、英folly)は無駄遣いという行動型への言及で、18世紀にフランスとイギリスの庭園に多用された装飾的な建築様式を象徴する意味も持っている。ラ・ヴィレットでもしばしばこうした体裁が見られる。
エナメル質に赤く塗られた頑強な鋼鉄の建物はラ・ヴィレットの設計者であるベルナール・チュミによるもので、日常から離れた芸術的かつレジャー的な活動空間を演出している。そして現在、川俣のタワーが驚くべき反響を呼び、柔らかい色合いの天然素材で形作られたその生命力と儚さが人々に熟考を促している。コレクティブ・フォリは華やかな建物と対立するイメージのようだが、両者は互いに衝突とは程遠く、すでに静かに実り多い対話を深めているのだ。
A Collective Folie by Tadashi Kawamata
会期:2013年4月17日(水)〜8月25日(日)
会場:Parc de La Villette
住所:211 avenue Jean Jaurès, 75019 Paris
TEL:+33 (0)1 4003 7575
https://www.villette.com
Text: Valerie Douniaux
Translation: Ayami Ueda
Photos: Takuji Shimmura