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瀬川葉子展「ファイル」

HAPPENINGText: Eri Yamauchi

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もう片方の窓のない壁側には作家が自作した縦長のライトボックスが設置され、その上にも多数のファイルが置かれていた。こちらのファイルは2重、3重に重ねて設置されており、窓側に設置されたファイルとはまた異なる印象だ。重なりの底にあるファイルの中身はぼやけて見え、上にあるファイルの中身はくっきりと見える。このコントラストが幻想的な雰囲気を作り出していた。

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また、奥側のテラスにもファイルが設置されており、新緑を背景に作品を観ることもできる。

本展覧会への訪問時には瀬川氏が在廊しており、作品について話を伺うことができた。

これらの作品は、どのくらいの期間でつくりあげたのですか?

私自身は絵も描いているのですが、絵とは違い、気軽に作ることができるためほぼ毎日作品をつくっていました。

作品というよりは、日記を書いているような感覚でしょうか。

その感覚に近いかもしれないですね。私自身は時間をかけて大きな作品をつくるよりも、日常の一部として、日々少しずつ何かを作る方が好きなのです。今の暮らしの中でできることを精一杯やっていきたいと思っています。

身近にあるものがこのようにファイルされることで、全く違う印象に生まれ変わる様子は本当に面白いですね。

そうですね。本展の紹介文には、「日常にあったものが非日常に生まれ変わる」という言葉も使いましたが、素材をファイリングし、光に照らすことで、自分でも意図しないような陰影が生まれました。また、ファイルを重ねることでがらりと印象が変わるのがとても面白く、ここ数日はライトボックスにあるファイルを何度も動かし、その変化を写真に撮って楽しんでいました。

彼女自身が誰よりもこの展覧会を楽しんでいるという印象を受けた。その印象をさらに強くしたのは、取材を終えようとしていた時に起こった面白い出来事だった。この展覧会を見たという一人の男性が再訪し、「ファイルの素材に使えそうだと思った」という理由でヒノキの木を加工した際に出た削りかすをギャラリーまで届けてくれたのだ。彼女はとても嬉しそうにそれを受け取り、素材をくれた男性に必ず作品に使いますと約束を交わしていた。
『この展覧会を始めてから、友人や知人がいろいろな素材をくれるようになりました。これをぜひ作品に使ってほしいと提案をしてくれるのです』と、瀬川氏は教えてくれた。身近な素材の面白さを探すという作家の目線が、展覧会を見た人にも伝わり、広がっていた。

小さな発見を大切にすることで、日常生活はもっと面白くなっていくのだと改めて思った展覧会だった。一枚一枚のファイルに作家の創造性が詰め込まれたこの空間に、ぜひ一度足を運び、新たな発見をしてほしい。

瀬川葉子展「FILE」
会期:2013年5月24日(金)~6月9日(日)
時間:11:00~18:00(最終日は17:00まで)
会場:ギャラリー門馬ANNEX
住所;札幌市中央区旭ヶ丘2丁目3-38
TEL:011-562-1055
https://www.g-monma.com

Text: Eri Yamauchi
Photos: Eri Yamauchi

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