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松山智一

PEOPLEText: Yuji Shinfuku

そしてストリートアート、グラッフィクデザイン的な要素と融合させる事で日本を含むどの様な国の人の目も引くユニバーサルな言語を獲得している様に見える。作品の色彩もポップで目を引く色使いをされているのだが、カラフルな蛍光色と淡い色彩の組み合わせは、細かな配慮がなされていて、その絶妙なコンビネーションは他に類を見ない独特なバランスを生み出している。

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“Holy Urine”, Tomokazu Matsuyama, 2012, Acrylic and mixed media on canvas, Approx. 90 x 56 inch

それに加え松山氏の作品は、前述のレストラン「KYOTO」のエピソードに見られる様な、異なる文化の相互関係が生むどちらか一方からの視点では完結できないような媒体を相手取っている様に思う。行き場の無いある種文化の不協和音、バグをエンターテイメントとして昇華させる。

近年ニューヨークで開かれた2つの展覧会「East Weets Mest」「Glancing at the twin peaks」というタイトルにも現れている様に思う。2つの全く違う文化を知る松山氏から見たあべこべの、ある種矛盾をはらんだ文化の融合。それは日本とアメリカを行き来された経歴にも重なるところがある。

しかしそんなミクスチャーな自分のバックグラウンドをそのまま表現するのではなく、ある種グラフィックデザイナー的な一歩引いた視点からその混沌を作品として成立させる。世界中で様々な文化が目まぐるしい速さで変容し、交配されている様な現代の形相を切り取っている様に見える。

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“Us”, Tomokazu Matsuyama, 2011, Acrylic and mixed media on canvas, 48 x 72 inch

作品とタイトルの関係もとても興味深いものが多く、個性的で目を引くタイトルが多い。一見どう結びついているか解らないタイトルと作品のバランスは、東洋的ななにか教訓めいたものを想起させる。それはまるで日本昔話の様な作品の裏にある物語で、鑑賞者はどこか西洋とは違う思考の流れを感じるのではないだろうか。

また麒麟、鹿、鶏など多くの動物も作品内には登場し、その躍動感のあるフォルムはグラフィック的でストリートカルチャーからの影響を見て取れる。多くの要素が混在し、鑑賞者が色々な観点から楽しめる伏線がちりばめられているが、それは堅苦しいものではなく、なにより万人がパッと見て目を引く魅力に溢れている。

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