パリ・ファッション・ウィーク SS 2012
HAPPENINGText: Shotaro Okada
季節外れの「インディアン・サマー」と呼ばれる酷暑のなか、パリ・ファッションウィークSS12は開催された。
今回、いくつかのブランドのコレクションを拝見し、そこから共通する言葉を並べ、自分が赴いたショーやプレゼンテーションを紹介していきたい。パズルを組み立てていくような気持ちで、このレポートを読んで頂ければ嬉しい。
「新しいシルエットの模索」、「旅」、「清らかさや前向きさが現れた衣服」は、今シーズン、僕が頭に浮かんだ言葉。
これらの言葉は、実のところ多義に及んでいるので、僕の伝えたいことが誤解されてしまう恐れがある。ファッションというのはそれだけ奥が深いということ。SHIFTのレポートでは、言葉の数と同じく、3部に分けて紹介する。どうか気長にお付き合いして頂きたい。
第1部「新しいシルエットの模索」
歴史を振り返ると、時代の節目には新しいファッションが台頭し、旧来とは異なった価値観と新たなシルエットをもたらしている。2010年代に、そのような革新的な出来事が起こるかどうかは分からないが、今シーズンでは、多くのブランドが新たなシルエットの在り方や、衣服と身体の関係を真摯に捉えているように思えた。
この「新しいシルエットの模索」という言葉を最も強く感じたのが、ヨウジ・ヤマモトのショーである。性と年齢を超えたシルエットの模索。途中から現れたドレスはフランスの18世紀のドレスを彷彿とさせる「洋服」でありながらも、ボリュームや質感に絶妙なニュアンスを加えたりと、ここしか出せない「色」に仕上げていた。少年が紳士服を背伸びして着るかのように、自らの性や価値観に縛られず、自由に服を着てみようというメッセージ。生地は、肉体に新たな詩を与え、歩くたびに柔らかく揺れる様がとても美しかった。そして、最初にブルーのドレス、最後には女性同士のウェディングルックで終えたところにクチュリエ山本耀司の気概を感じる。とても人間的な優しさに満ち溢れていた。
そして、ファッションウィーク初日に行なわれたティミスターのショーは、シルエットの冒険に満ち溢れていた。弦楽器が激しく鳴り響く中、オリエンタルなムードを纏ったモデル達が次々と登場。その姿かたちは独自の起伏に富んだものであった。テーラードジャケットには、ゆったりとしたテーパードシルエットの民族調のパンツや縦に長いドレスを。着物の折り返しを思わせるディティールの衣服は鎧のようなベルトでバランスの均衡を。長いブランクを経て近年活動を再開したデザイナーに、スタンディングオベーションまで起こったショーであった。
ベルトでウエストをマークしながらも、ティミスターのショーで感じたのは、縦に伸びるようなシルエットバランスであった。このようなボディのラインを強調しない衣服の在り方は、ダミール・ドーマのショーで多くを見ることができた。
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