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マックス・ハトラー

PEOPLEText: Mariko Takei

作品は世界中の数多くの映画祭で上映されているようですね。これまでの活動でターニングポイントとなった作品があれば教えてください。

RCAの卒業制作映像「コリジョン」により新しい方向性での仕事の幅が広がりましたね。どの作品も自分の実績を形成し延ばしていくものなのですが、「コリジョン」がターニングポイントでもあるし、スターティングポイントでもあるのです。「コリジョン」が少なからず印象深いのは、アブストラクションを通じて政治に関してコメントしたり、メタフォーとしてグラフィックアートを展開したりという、何か新しいことをやったからでしょう。従来のストーリーを語るという部分を省き、音とイメージを結合させ、地政学的な状況をカレイドスコープっぽい映像で制作したものです。

ショートフィルムやミュージック・ビデオなど、他の作品をご紹介頂けますか?

ここで紹介したい作品に、ショートフィルムの「スピン」(2010)があります。「コリジョン」のアイディアを発展させた作品で、パターンとシンメトリーであることは、直接的に、そして、普遍的に美しいものとして知覚されるという事実を利用してつくりました。興味深いテンションをつくり出している「コリジョン」は、物語が革新的に展開しつつ、見る者は即座にその美しさを通じて作品の世界へと引き込まれるという作品です。物語のインパクトが最も影響を受けると、見る者は逃れられないほど、すでにそれに魅了される。僕にとって、これは暴力の審美性や戦争の併合性などに対するコメントでもあります。その上に「スピン」は、1927年にジークフリート・クラカウアーが命名した「マス・オーナメント」(mass ornament)ということにフォーカスして構築しています。また、バスビー・バークレーの現実逃避主義のハリウッドミュージカルのビジョンや、コミュニストのパレード、レニ・リーフェンシュタールの独裁的なファンタジーなどからもインスピレーションを受けています。「スピン」では、過去と現在のおもちゃの兵隊が、ビジュアルパターンとなることを余儀なくされ、見世物としての矛盾を展開します。暴力とエンターテイメントの境界はもはやぼやけ、軍隊(troop)と一座(troupe)の境界もまたしかりである。厳密な意味で、この作品は抽象的なものではなく、ビジュアルの動作とコンセプチュアルな抽象性を通じてその目的を果たしているのです。

DOTMOV選出アーティストのロバート・サイデルとの共同作品があるように、様々なアーティストと多数のコラボレーションを手掛けていますね。これまでのコラボ作品について教えて下さい。

2008年にロバート・サイデルと5週間日本ツアーを行ったんです。そこで、ロバートのオーガニックな美しいものと僕のグラフィックのアプローチを組み合わせ、ビジュアルパフォーマンスのコラボ映像をプレゼンしました。それ以来(ゆっくりと)一緒にある映像作品を手掛けています。でも、純粋なコラボレーションというよりは、2つの映像で同じ題材に取り組むといったような感じで、「バイポーラ」(Bipolar)というタイトルで日本での経験を抽象的に凝縮したような作品です。このプロジェクトは2011年に完成予定です。あと、ここ2年程は、エクスペリメンタル・アニメーターのノリコ・オカクライブ作品でコラボレーションしていますね。オーディオビジュアル・パフォーマンスの「(O)」という作品では、ノリコのイメージと僕の音楽とのコラボレーションを展開し、アニメーション・パフォーマンスの「/\/\/\」は、2010年ボーフム国際ビデオフェスティバルで受賞を果たしました。他にも、2009年にヨーロッパ中をツアーしたパフォーマンス作品「OH YES」などがあります。

共同監督作品というのは自分にとってかなり大変ですし、通常はあまりやりません。その他だと、ジ・エッグ、ベースメント・ジャックスや父親のヘルムートなど、主にサウンドアーティストやミュージシャンとライブやビデオでコラボレーションしますね。一番最近にやったオーディオ/ビジュアルのコラボレーションは、僕のライブビジュアルとトルコ人作曲家のメフメト・ジャン・ウーセルとの即興演奏があります。ビジュアルと音という素材のダイレクトなコミュニケーションや人間の即興演奏というのが、自分が今後もっと広げていきたいものなんです。

パルチザンに所属していますが、コマーシャルなプロジェクトは手掛けてますか?

今年始めにパルチザンに所属してからは、世界中でのパフォーマンスや作品の展示などでかなり忙しくしているので、パルチザンを通じてはまだコマーシャルな作品は手掛けていません。パルチザンは自分の実績にあらゆる面でとても協力的で、静岡市クリエーター支援センター(CCC)での作品の展示の際もサポートしてもらったりと、今後のパルチザンとのプロジェクトが楽しみですね。

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