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川元陽子展

HAPPENINGText: Memi Mizukami

何気ない日常の風景をモチーフに作品を制作する作家、川元陽子の個展が10月16日から原宿にあるトーキョー カルチャート by ビームスで行われている。大きさは大体A2からB2の同じくらいのサイズでまとめられており、全部で15点が展示され、そのほとんど全てに車、二輪自動車が描かれている。写真を忠実に模写した絵からは匂いたつような風景と殺伐とした風景とが、ある種劇的なまでに描かれている。

川元陽子展

全て自身で撮った写真を元に描かれているそうだが、東京では あまりいい写真が撮れないらしい。写真を元にして、それを忠実に模写するという行為は、写真を前提としてあるものとすれば反復的であり、疑問すら生まれかねない。「忠実に写真を描くということで、写真との差異を意識しているのか」と伺うと、川元氏は「純粋に写真を目指すのだ」と語る。彼女の被写体の選び方は、人為的な何かを感じるもの、偶然的でもそこにかすかな人間の匂いの感じるものだ。動かない車は、どれもみな元は誰かの車であり、海辺に置かれたトラックには、おそらく数時間前には人が乗っていたであろう。確かに東京ではそういった”僅か”な人香を見つけるのは難しいのかもしれない。

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その普段の風景に埋もれた一面を切り取り忠実に描き起こす。彼女の切り取る一場面からは、何も起こらない、あるいは、じっくりと時間をかけてその成れの果てともいえる形になったのか、あるいは瞬間的か。モノリスのようにシンボリックに描かれる車や機械やコンテナが朽ちる様からは、盛者必衰のようなものも見て取れる。また、ひとつの作品に対して一ヶ月ほどかけて制作しているのだそうだ。

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川元陽子は30歳になるまで本格的に絵を描くことはなかった。人間の業に対するシニカルな目線による寂しげで事切れた風景、そしてそれが言い得がたい美しさを持つということ。至って純真な雰囲気を持つ川元陽子自身は今後も忠実に書き続けるだろうし、彼女の対象物としての現代のモノリスは今後も増え続けるだろう。展示は11月4日まで行われている。

川元陽子展
会期:2010年10月16日〜11月4日
営業時間:11:00〜20:00
会場:TOKYO CULTUART by BEAMS
住所:東京都渋谷区神宮前3-24-7 3F
TEL;03-3470-3251
https://www.beams.co.jp

Text: Memi Mizukami

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