ウィーン・カフェ・フェスティバル
HAPPENINGText: Sayaka Hirakawa
カフェで生まれるのは、なにも恋だけではない。「カフェは “文化の生まれる場所” である。」という、ある学者の名言もあるように、多くの偉大なアートや文学、さらには歴史に残る革命も、始まりはカフェだった。19世紀後半から20世紀初頭のウィーンにおいても、カフェは人々がくつろぎ、情報を交換し、刺激を受けることのできる、生活になくてはならない場所であった。その当時のカフェの魅力をたっぷりと紹介してくれるのが、ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)を中心に開催されたウィーン・カフェ・フェスティバルである。
クラシックなウィーンカフェの歴史を辿る展覧会、カフェにまつわる映画の鑑賞会、講演会、音楽会が開かれ、贅沢なカフェ時間を提供した。そして何よりフェスティバルの開催期間中、ギャラリーに突如現れたウィーン生まれのチョコレートショップ「デメル」カフェのカプチーノやスイーツは、訪れる人々の心をうっとりと、とろけさせたことだろう。
歴史をさかのぼると、19世紀の後半、パリやウィーンなどでは急激な都市人口の増加にともない、慢性的に住宅が不足し、住空間の劣悪化が進んだ。これがカフェをうみ、そこから文化工房としてのカフェが生まれた。屋根裏部屋暮らしやフラットシェアをするような生活を強いられてきた、売れないアーティストや駆け出しの物書きにとって、そこはさぞ居心地の良い場所だっただろう。そんな当時の風潮を物語る、古い写真やドローイングがギャラリースペースに展示されている。
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