ジャイルズ・ロールストーン「アーバン・フィードバック」

THINGSText: Rita

ジャイルズ・ロールストーンの「アーバン・フィードバック」は、既に2年前のシーグラフ1995で発表されていたが、1997年のミリアで、ネビル・ブロディ主催のリサーチ・スタジオと出会ったことで、CD-ROMが発売されることになった。そして、ようやく日本でも「DIGITALOGUE」から発売され、我々の手に届くようになったのだ。

RCA(ロイヤル・カレッジ・オブ・アート)で、インタラクティブデザインの教師でもあるジャイルズ・ロールストーンは、以前、ロンドンの急速に発達するマルチメディア業界で、実験的な研究、開発に携わっていて、現在もCRD(Computer Related Design)のプロジェクトのメンバーとして活動している。アーバン・フィードバックもこの一貫で、CD-ROMやTVなどのデジタルプロジェクトで活躍するソフィー・グリーンフィールドと共に制作プロデュースされたものだ。

「アーバン・フィードバック」は、ロンドン、アムステルダムの旅をベースに、都市に散らばっているメディアの断片をスキャンし、コラージュすることによって近代都市の混沌としたエネルギーを表現している。ユーザーは London- Amsterdam- Memory Space- Sound Space と4分割されたフリーフォームスペースへの旅に誘われ、エンドレスな時間のシーケンスを浮遊する。めまぐるしい早さで展開する映像のひとつを自分が選択して空間を移動しているのに、漠然とした不安感。情報が錯綜し、混沌とする現代社会に居住する自分と、このCD-ROMを操作している自分とがシンクロする。

同じストリートを歩いても、視覚的、経験的に、ひとそれぞれ異なるように、都市には様々な記憶や瞬間が凝縮されている。それを、イメージやサウンド、テキストが並列されることによって、ユーザーに主観的考察を引き起こすのだ。具体的にロンドン、アムステルダムと2つの都市がここでは取り上げられてるが、似通っている。これは、発展し続ける都市の近似化なのだろうか?全体としてシュールな印象を持ったのは、この作品を通してのジャイルズの都市生活の印象が、肯定的にも否定的にも感じられなかったからだ。あるがままの現実を彼のフィルターを通して冷静に客観視しているよう思えた。複雑化する都市に生活する私たちに、何を選択し、何を感じ、何を経験するか、全て自分自身なのだ、と伝えたかったのかもしれない。

最近、映像とサウンドのコラージュ作品は特に活発だ。身近なところでいうと、CD-ROMと音楽CDの2枚組が発売されるようになったことだろう。日本のアーティストでもケン・イシイなど、テクノ業界でよく見かける。コールド・カットの新譜「Let Us Play」でも、彼らの映像を手がけるHEXのビデオが収録されていて、コールド・カット自身がHEX TEAMとのコラボレーションのビデオ作品をみてからアルバムを聴くことを勧めているのだ。彼ら曰く、音楽CDへの挑戦だそうだ。もう、カテゴリーなど不用になってきているのだと実感している。

アーバン・フィードバックを一度体験した者にはウェブにおける今後の課題でもある容量やユーザーの環境による弊害は否めないが、CRDのサイトからアーバン・フィードバックの縮小版にアクセスできる。

Text: Rita

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