若野 桂
PEOPLEText: Kazumi Oiwa
イラストに関して、ファッショナブルでレトロガーリーな切り口が多くみられますが、ファッションとグラフィックの関係をどうお考えですか?
私には子供の頃から60年代から70年代のファッション写真がモダンな彫刻のように思えるので、何となくトラウマからそういうものに引きつけられる事が多いようです。自動車にしても、「ハッ」として見てしまうような車はそういう時代のものが多いようです。
私の父親は大してお洒落な趣味もなかったのですが、洋画を観るのが大好きな人で、週末になるとフスマの間から寝ながら「ダーティー・ハリー」なんかを観た記憶が今もありますから、ずいぶんと原体験に蓄積したのかもしれません。今でも70年代の映画のビデオを観てシーンやストーリーが鮮明に頭に浮かぶ事がよくあり、「観た事あるんなら最初から言ってよー。」と言われたりします。
私自身は流行のファッション情報をおおざっぱにしか把握していない上に、輸入の格安古着が好きで新しい洋服を買う事も少ないので、気がつくと何十年代のファッションだかわからない姿になっています。ですから、無知な分、なんとなく頭に浮かんだ洋服を描くと昔の深夜映画で見たスチュワーデスの洋服やジャズ・マンのスーツなどが出てきてしまうのかも知れません。
2nd作品集「RAW COMMUNICATION」(晶文社) © phil co.,ltd.
デザインのアイディアはどのように生まれてくるのでしょうか?インスピレーションの源があれば教えてください。
これについては自分でもよくわかりません。例えばキャラクター的なモチーフであれば、かなり人気のない物を持ってきて自分なりに工夫して形にする事が好きです。たまにはあまりに人気のないものを持ってきてしまってどうにもならなくなる事も多いですが。それでも頑張っていると、とてもいい結果が出てきたりします。また、お題がいいときは最初から具体的なものがハッキリ描けたりしますので、あとは体裁を整えるだけだったりもします。
あとは音楽に関するものであれば、曲を聞いたとたんにいい映像が浮かんだりします。レコード・ジャケットも同じような事が多いです。何回も聞くうちにいろいろな絵が浮かぶので、その中で実現可能かつアーティストの意向も反映したものを製作します。
キャラでも音楽関係でもない作品のアイディアも、いろいろ観たり聞いたりしているうちに自然に出てきます。温泉に入っている時とかによく出てきます。
Artwork for CD「Nobukazu Takemura-Sign」(2001年) © phil co.,ltd.
竹村延和「Sign」の海外版には10分のアニメーションを収録している。
好きな音楽、ファッション等、プライベートについてお話いただけますか?
音楽は、ソウル、パンク、ロック、ジャズ、ファンク、ヒップホップ(E&W両方)、古いN.Y.ハウス、レゲエ、ダブ、エレクトロニカ、現代音楽、アンビエント・テクノ、映画音楽ほか気に入ればなんでも聞きます。とくにクラブDJ界との付き合いは20年近いですから、外に出て音楽の話題がない日はないかもしれません。
服は安い古着が好きなので、金のかかる格好は観る事は好きですが自分では着ません、というか着れません。しかし、すばらしく綺麗な服を観ると「私がイタリア人で彫刻のような色男だったら金払ってこれ着てみたいなあ…。」と思います。それでも40歳ですから、以前はまったくチグハグに見えたジャケットが違和感なく着れるようにもなってますから、ダーティー・ハリー系でも行ってみようかと思います。
プライベートは犬の世話をしたり、中古のカメラをいじくったり、軽トラックの洗車をしたり、古本を買い漁ったりしています。このあいだは軽トラックで工場の解体を見に行って70年代の立派なデスクを頂きました。
展覧会への意気込みを教えてください。
この回答を書いてるときにすでに意気込みすぎて胃潰瘍を作ってしまいました…。
死なない程度に意気込みます。
今後、やりたい事、目標などがあれば教えてください。
どちらも多大にありますが、なにぶん大人の仕事なので準備ができ次第その都度お知らせします。展示に関しては今後もバージョンアップし、開催してゆきます、ご期待下さい。
LACK MARKET / Katsura Moshino solo exhibition
若野桂 個展『BLACK MARKET』
会期:2008年11月21日(金)〜12月3日(水)*木曜日定休
時間:11:00〜20:00(最終日のみ18:00まで)
会場:Gallery Speak For(代官山)
住所:東京都渋谷区猿楽町28-2 SPEAK FOR B1F
https://www.galleryspeakfor.com
アーティスト及び、展示に関するお問い合わせ:phil co.,ltd.
Text: Kazumi Oiwa