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クリストフ・ランバート展「差し迫った混沌」

HAPPENINGText: Gudrun Rau

ヘリウムカーボーイ・アートスペースの5メートルの高さの壁は、様々なアートでちりばめられている。キャンバス作品の横に紙の作品、大きな作品の隣に小さな作品。あるものは暗めで、またあるものは蛍光色でまばゆい。

Christophe Lambert Exhibition

ギャラリーに入ってすぐ右には、チャペルがある。それは、上から下まで、黄色っぽい紙の断片で覆われていて、それにふさわしく十字架象がある。だけど、その見慣れた教会のシンボルの横で、エナメル皮のブーツを履いた裸の女性が何をしているのか?見解の一致を見つけ、アーティストに感謝する。なぜなら、彼は全てを同じように、少しの愛情も含めながらも、軽蔑して表現する。そうすることによって、たとえ類似点がパーチメント紙の上に描かれた白黒のものだということしても、ポルノや聖職背景からの引用が調和されて混じり合う。

Christophe Lambert Exhibition

様々なコンテクストからのシンボルや人物の溶融と溶解が、映画となって再現されるテレビを囲って、祭壇が建っている。それはまるで、何が善で悪か、何がばかげていて、何が深刻なのか、何がハイカルチャーで、何ががらくたなのかを気にしない、新しいカルトが出現しているように思える。このカルトは全てを結合させる、混沌カルトである!

展示は混沌としたように見えるかもしれないが、この展示のタイトル「カオス・イミネント」(差し迫った混沌)がその真実を明かす。フランス語圏であるスイス生まれの独学アーティスト、クリストフ・ランバートのアート作品は、いつも無秩序の瀬戸際なのだが、それは実際には起こらない。雷を伴った嵐がやってくるのを、絶えず感じることができる。その展示は、なにかはらはらするような事が、いまにも起こるのではないかというスリリングな感覚をまきちらす。それは、どこかに出かける前に感じる興奮と同じようなものだ。夜がまだ始まらないうちは、なんでもが可能だ。期待や思惑に他ならない。

Christophe Lambert Exhibition

ペインティングやドローイングを注意深く見る時でさえも、来客者は沈思してしまう。クリストフのスタイルは、答えられぬままの質問を残すのに十分なほど不正確である。とても象徴的であっても、彼の絵の中のメッセージは抽象的である。ハルク、バンビ、バットマンなどの有名ポップカルチャー象と、子供っぽい手書きから、ティーンエージャーのロックバンドのレタリングまで及ぶタイポグラフィー、淡いベイビーピンクとパステル調で示された露骨な性的なイラスト、ニーチェやゴルディロックのポートレイトの組み合わせ、この全てが既成の意味で充満している。支離滅裂な破片たちは、それぞれの見物人の知覚の中でだけで混合される。

Christophe Lambert Exhibition

そういうわけで、この夜の作品への反応は、来客者個人個人の背景によったものとなる。ある者が、縛られた女性が反抗している絵を見ている間に、他の者は、プレゼンテーションの感性に注目し、主に作品のユーモアとその無礼さを批評する。またある者がクリストフの未熟なテクニックを批評している間に、他の者は、このだらしない感じが、上記の曖昧さの一助となることに気づく。

この漠然さなしでは、ある主題は、単調または残忍に見えるかもしれない。しかし、明白な不完全さとともに、全ての絵は、見ている者を主題の暴慢さに気づかぬふりをさせる無謀な自発性を継いでいる。

クリストフのユニバースは、あらゆる種のものを含むので、どのアート好きも自分にとってのお気に入り作品を発見するチャンスがある。アイスクリーム好きのためのアートもあれば、足好き、ニーチェ、バルバレラ、ゴルドラック好き、ナイトや下着好き、おしり、心臓、脳みそ好きのためのアート。みんなのための、一人一人のカオス!

Christophe Lambert “Chaos imminent”
会期:2008年2月16日〜3月14日
時間:10:00〜19:00(日・月曜日休廊)
会場:Heliumcowboy Artspace
住所:4 Sternstrasse, 20357 Hamburg
https://www.heliumcowboy.com

Text: Gudrun Rau
Translation: Fumi Nakamura
Photos: Gudrun Rau

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