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APMT 3

HAPPENINGText: Yoshihiro Kanematsu

続いてはネットを使った実験的なプロジェクトを多数展開し、今や世界中でインスタレーションを行うエキソニモが登場。

APMT3

途中スクリーンが表示されないハプニングがありつつ、むしろ「おいしい」とハンディカメラで即興に巻き返すあたりは流石の手際だ。勝手にキャラが飛び回るゲームインスタレーションの可笑しさと異様さの表裏一体で、マウスが絶命する瞬間を楽しむ「断末魔ウス」など、ギリギリの表現は近作においても変わらず健在(というかむしろエスカレートは止まらない)。それでも「ウェブ退化論」を敢えて掲げ、「そこに人が居る」という事実に真摯に(ゆるめに)迫ることで、インタラクティブをデザインすることの生き様を、僕たちにぐいぐい魅せてくれた。

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4番目の大日本タイポ組合は、「KUROFUNE 20000」(アルファベット “A” と読み方 “エー” が同じパーツでできる!)と「FUN FUN」(F、U、N、F、U、Nで“楽”の漢字がつくれる!)、そしてコクヨから発売された「TOYPOGRAPHY」からデザインタイドに向けて出展された新作タイポ遊び「PLAY」までの、歴史を紐解いていく。そこにはフェティッシュともいうべき意味と形への飽くなき思索の糧が込められていた。同じひらがなでもいろんな「あ」や「な」が存在し、誰かがそれを鳥だと受け入れる限り、鳥を象るでも好き勝手な鳥がありえる。その正解のないクリエイティブが意味するものこそ、文字を象ることの秘密、つまりは何かを伝えることの秘訣なのかもしれない。

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そしてトリは、以前SHIFTでも「MATZU-MTP展」をレポートしたペインターの松山智一。「つくりたいものをつくって職業としてやっている人たち」に憧れ、グラフィックデザイナーから一転ニューヨークへ。自ら企画書を持ち込んだり軌道にのるまでの経緯を話してくれた。アートの中心地だからこそ「意味を言語化しなくてはいけない」という厳しさの中、次第に自分のルーツ “日本” とストリート感が見事に調和した作品へとつながっていく。日本の伝統的モチーフがポップな色とパターンに染められ、ハイブリッドなアートワークはいよいよ小震いするほど新たな価値を帯びたのだ。そこに至るまでの等身大のメッセージはしっかりと僕たちに向けられ、クリエーションの意欲を鼓舞するものだった。

APMT3

APMTでいつも感じるのは、まさにその突き動かされるモチベーションである。それは、心に響くインタビューを読んだときの感情に近い。カンファレンスは大切な言葉たちをライブで受け取る格好の機会なのだ。テーマは「What is your color?」ならば、自分にしか出せない色はなんだろう。その問いかけはきっと、まっすぐに僕らを次の作品へと向かわせている。

APMT 3
会期:2007年11月17日(土)
会場:BankART Studio NYK
住所:横浜市中区海岸通3-9
https://apmt.jp

Text: Yoshihiro Kanematsu
Photos: Shimpei Yamamori

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