テイ・トウワ
PEOPLEText: Shinichi Ishikawa
ミュージシャンであり、DJであるテイ・トウワの「クリエイティブ」という部分に焦点を絞ってインタビューをしてみた。ファンの方にも、これから聴きたい方にも興味深い内容になっていると思う。また、数多い作品の中からオリジナル・アルバム中心に紹介していこう。
「楽しい20年」
今回リリースしたアルバムは94年のソロアルバムのリマスター盤(と新規リミックス&未発表ヴァージョンの2枚組)。廃盤の状態が惜しいというのがあって。今だに自分でもかけるし、かかってもいるアルバム。13年ぶりの再発。2005年のソロ「FLASH」の次に来ても全然おかしくないアルバムだし、最近僕のCDを聴き始めた人が聴いてくれてもいいかなと思う。DJ20周年というのは短く感じますね。楽しいことは短く感じる、というからトータルバランスでは楽しい20年だった。
「考える前に手が動く」
DJという人前でやる仕事をずっと続けてきたのは結構重要だと思う。続けることによって気がつくことも多い。時には2週間で6回とかハードな感じでやってるし、週に1回はやっている。DJの現場での仕事というのは試行錯誤があるから、そこで動物的というか、考える前に手が動くということもある。
僕はDJと(CD等をつくる)プロダクションは完全に分けて考えている。DJはいろいろな人と音を通してコミニュケーションをするのが楽しい。極端に言うと好きな曲をかけてお金をもらえる訳だから最高だと思う。プロとしてやっていくためには美意識が必要でそれが集客にもつながると思う。僕はお客さんが沢山居てくれる、プロモーターが声かけてくれるうちはDJしていたいとは思っている
1st Album「Future Listening!」(1995)
アメリカ帰国後にリリースしたソロ第一弾。ボサノヴァのティスト、ラウンジ・ミュージックを先駆けたマスターピース。
「聴かないで作る」と「聴いて作る」
(音楽の)作り方のスタンスというのは大きくふたつに分かれると思う。「聴かないで作る」と「聴いて作る」。僕は外からの刺激は欲しいから「聴いて作る」タイプ。いろいろ聴いていても良い音楽の比率というのは少なく感じる。音楽のおもしろいのは聴けば聴くほど分かってしまって良いなと思うことが減っていく。それでも懲りずにいろいろ聴いてみると、時には発見があるからおもしろい。これらは音楽を作ることも同じ。今は若い頃に比べると音をむやみに鳴らさないほうがいいと思う。プロダクションは期間を決めて集中するタイプ。
2nd Album「Sound Museum」(1997)
Museum(博物館)というタイトルがふさわしい、より緻密な音世界が構築されている。
「インターネットの利便性と、クラブでのプリミティヴが共存」
ツアーで国内をまわっても地方による違いというのはあまり感じない。感じるとしたら地方性というよりハコの雰囲気とか、プロモーションによる違いかな。お客さんの男女のバランスによっても変わるし、一緒に共演する人によって変わるかもしれない。今は、インターネットによる情報共有が進んでいるから、以前のように地方だと盛り上がる曲が決まっていたり、インストはノリが悪いとか、そういうことは無くなってきてる。お客さんの質が底上げがされていて、東京と地方のギャップというのはそれほど感じない。
音楽に限らず、家でインターネットで足りてしまうこと増えている。それが逆にクラブのような、みんなで時間を共有するイベント、一種の「お祭り」に参加する重要性というのが高まっている。もともと音楽というのは儀式といった形で人間の生活に自然にあったものだし。そういう部分がカムバックしている。だから、今、音楽フェスティバルも増えてるし、クラブが盛り上がってる部分もあると思う。
3rd Album「Last Century Modern」(1999)
UA、パスカル・ボレル、Ayumi Tanabe & Viv、charaが参加。テクノからフレンチ・ポップ、R&Bの要素も。
人はアナログでファジーだから、ずっと一人ではいられないよね。どんなに安く音楽が自宅で楽しめてもクラブでの大音量の体験を自宅で再現するのは不可能だし。ハウスとか、ヒップホップというのはボディソニックで儀式で太鼓を叩いて踊るのに似ている。ある種、原始に戻ってるよね。インターネットの利便性と、クラブでのプリミティヴが共存できる状況になってきている。そのあたりは僕は予測はしてなかった。
続きを読む ...