ジャムセン・ロー回顧展

HAPPENINGText: Samantha Culp

映像は、90年代初期のエキサイトな様子が、明るいゆがみやパステル効果に明らかに用いられ、少し時代遅れな印象を与える。コンスタントで小さな映像のスーパーインポジションや、フレームの中で漂うスチールイメージボックスなども使われる。長く、平坦なローやコラボレーターのシーンを、辛抱強く見ながら、テーマである「忍耐」が見る者にも現実化してくる。彼らはカメラの前でゆっくりと食事をしながら、ピンクやパープルの影に変えていく。それが、見た目に関係のない、しかし面白いコンテンツにかわると、ようやくそのスクリーンを通したビデオボックスにも心地がよくなるのだ。


Matching 4 with 12 – Mapping Vapour (2002)

そのコンテンツとは、海の抑揚、街のストリート、カメラにスマイルを向けるシャツを着ていない中国人、その人が見慣れないインタビュアーに話しかける様子などだ。始めは、この映像作品の後半のシーンには、もっとまとまりがあるものだと思った。例えば、香港の地下鉄のプラットホームがパズルゲームに変わり、ランダムに分解される映像など、90年代の構造主義に合うのでは無いだろうか。しかし、それでは満足できないのだろう。


Matching 4 with 12 – Mapping Vapour (2002)

後の作品「Mapping Vapour」は、異なる演出で、力強い効果とシンプルな形のアイディアが探究されている。港の長いシーンと、遠くにセットされた丘のシーンがある。動きが少なく、一様で、何とも言い難いサウンドトラックが流れること約5分間。スピードボートが左から右へ通過し、後ろの水面を大きく波立てる。ボートの通った後がゆっくりと消えていくのをただ見つめる。この作品は完璧な忍耐のエクササイズだった。そして全てのスクリーンに値うちを与えていた。

HK Film and Video Artists Series #3: Jamsen Law
会期:2005年8月27日(土)・30日(火)、9月15日(木)・16日(金)
会場:Agnes b. Cinema, Hong Kong Arts Center
住所:2 Harbour Road, Wanchai, Hong Kong
TEL:+852 2582 0200
https://hkac.org.hk

Text: Samantha Culp
Translation: Yurie Hatano

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葛西由香
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