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ミキサー

HAPPENINGText: Shinichi Ishikawa

私たちは映画という手段を使って自分たちを表現してきた。その場所が映蔵庫。映蔵庫とは冷蔵庫のように一つの箱にいろいろな食材を詰め込んでいくように沢山の表現が集まる場所だ。私たちは過去三回にわたり箱の中で沢山の才能を見て刺激を受けた。表現することに対してもっと「柔軟さ」があれば才能たちと自分たちをうまく絡めた全く新しいアプローチができるのではないか。

箱の中では一つの食材でしかない私たちが調理され、生かされながら新しいものができる。あくまでも私たちのベースは「映画」である。

しかし自分たちの表現ツールのひとつとして、もっとポップに新しいものを受け入れ、消化し、進化できるならばこれは映蔵庫の根本的な思想に繋がるのではないか。そして、それこそ自分たちにとっての成長、変化である。さぁ、次に目指すことは何か。(MIXER フライヤーテキストより)

一番身近な「映像」とは何だろうか。TV? まぁ、そうだが僕はあまり観ない。それよりも、自分の目から見える風景または光景ではないだろうか、とある日、仕事場に行く途中に気がついた。アスファルトの歩道、おなじみの24時間消えることのないコンビニエンスストアのサインボード、道路を走る車と、そこから発せられるノイズ。それは、まさしくサントラつきの「映像」である。僕たちの日常は仕事にしろ遊びにしろ、いつも視覚的要素の比率は高く、かつそれらは時間軸にならって変化しつづけるもの(=映像)なのである。そう考えると他の表現形態である、平面のグラフィック=2次元で音はない、音楽=視覚的なものはない、という表現方法の「限定され具合」がとてもアバンギャルドなものに感じられてくる。

ここ数年、「コラボレーション」はイベントのひとつのキーワードとなっている。なにかイベントを仕掛けようと思えば必ず頭によぎる言葉だ。自分をプランナーとしての立場でいってしまうと、異なる表現の組み合わせで、新たな「表現」を行うというのは非常にデリケートで難しいものである。適当な空間を確保して、それらを視覚的に「イイ感じ」に並べればいいというものではない。「コラボレーション」という言葉も語感の良さとは裏腹に曖昧なものであり、「表現1」と「表現2」との間に0.1ミリもの接点があればいいものではない。なぜなら、接点というのは「着地点」ではなく「前提」であって、つながることにより表現と表現が互いに血液交換をおこない単独では実現できなかったエネルギーを観客に体感できる(ここは重要だ)形で提供されなければならない。結果として「1+1=」の答えを「10」でも、「3」でも、「‐33」でもいい、いかに「2」以外のアンサーを導くかがポイントになるだろう。

今回、札幌在住の映像作家であり「映蔵庫」総括である長沼里奈らによる “映画×写真×パフォーマンス” を組み合わせた展覧会「MIXER」が札幌の中心部にあるファッション・テナントビル「4丁目プラザ」の7階にあるイベントスペース「4プラホール」にて行われる。

「映蔵庫」とは、 2000年に立ち上がった自主制作映画上映イベント。コンセプトは「作り手と観客の距離を縮める」ことであり、単なる上映だけではなく、絵画やインスタレーション、写真や造形アーティストの作品の展示も同時に行い、作家や観客、そしてこれからなにかを表現していきたい人への良い出会いの機会を提供してきた。過去、札幌では3回、函館で1回実施されている。

今回の「MIXER」では「映蔵庫」で得てきたものを「変化」というテーマのもと、「映画」「写真」「パフォーマンス」の三つの構成で展開。物質の変化、感情の変化、進化、変質、変形などいろいろな形の「変化」を観客に表現・体感できるイベントにしたいということ。

映画×写真×パフォーマンスという3つの要素を単に同じ空間に並べるのではなく、それらのひとつひとつの境界線をとり払い、融合させていくイベントになりそうだ。ライブパフォーマンスも加わることにより、展覧会という「静的」なイメージから、「動的」で有機的な「場」が作られることが狙いだろう。そして、「観客」もコラボレーションの要素として機能することを期待したい。最後に僕は、「MIXER」という言葉は気に入っている。わかりやすいじゃないか。「コラボレーション」よりずっといい。おいしい「ミックス」を期待したい。

映画×写真×パフォーマンス「MIXER」
会期:2004年年6月22日(火)〜28日(月)10:00〜20:30
会場:4丁目プラザ 7F 自由市場内 4プラホール
ライブパフォーマンス:6月25日(金)、26日(土)、27日(日)の3日間
パフォーマー:成田愛裕美、sleepy.ab、caffca
http://www.h4.dion.ne.jp/~anir/

Text: Shinichi Ishikawa

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