リミテアゼロ
PEOPLEText: Simone Biffi
今回は、ミラノを拠点に活動する建築/メディアデザインスタジオ・リミテアゼロを紹介しようと思う。デジタル・アイデンティティ・デザイン、インタラクティブ・デザイン、展覧会デザイン、サウンド・デザイン、建築物や公共の場におけるメディア、クリエイティブなネットワーク・ソフトウェアのデザインなどを手掛けているのが、このリミテアゼロだ。
リミテアゼロの実験的な活動は、人間、機械、そして環境という3つの相互関係についての探究を行うこと。フィジカルなものと、デジタルなものを繋ぐ掛け橋的な活動でもある。論理的だったり、推論的なものではなく、インターフェイス・システムを使用して情緒的なアプローチを確立するのが目的だ。実験的なフォームで完成した作品は、主に数学的なプロセスと、ランダムな発展的なプロセスによって集められたフォームやイメージを研究するもの。この場合「ランダム」とは、コーディングによる表現の中でよく見られる、連続性なものを指す。
リミット(限界):近似というアイディアに基づいた、数学的なコンセプト。基本的には、価値が定められていない点における、ある特定の機能に価値を与えるために使われる。そうすることで、一番近しいものとの密着感が発生する。
「ハンドルド・デバイス」展について教えて下さい。
リミテアゼロ:約1年前に、ガス・アート・ギャラリーの方から、ガスの企業イメージの制作とマルチメディア・システムを制作してもらいたい、との要請を受け、プロジェクトをスタートさせました。また、作品の横に、作者や作品についての紹介文を書いた小さなメモを掲示するよりも、もっと違った方法で来場者が情報を得られる環境を作ってほしい、という要望も同時に受けました。
そこで浮かんだのが、ワイヤレス化されたコミュニケーション・システムを実現する、というアイディアです。展覧会の目的についての情報をより得易くすること。そして、来場者の誰もが思わず夢中になってしまうよな、ちょっとメディアチックなインタラクションを会場一杯に広げることが目的でした。実は、新しいバージョンの作品も現在制作中で、近々完成する予定です。これは、インタラクティブなセクションになる予定で、実験的な作品のコードがいくつか導入されています。展覧会では、ソフトウェアを専門に活動しているアーティストを何名か招待し、それぞれの装置がお互いにつながるような作品を発表してもらうつもりです。
このプロジェクトのコンセプトは?
何か「新しい」ながらも、おもしろくて、使いやすいものを作りたい、という気持ちがありました。コンピューターに慣れていない人でも、使い心地がいいと思えるもの、というのが、まず初めに思い浮かんだアイディアです。こういった感覚で、私達はこの作品を、私達独自の「感情的vs倫理的、推論的」なアプローチにつながるような作品として受け入れることができたと思います。
このプロジェクトは常に、ユーザーのニーズを頭に起きながら進められました。ユーザーが良く分からないまま、そして困惑しながら私達の作品を触っている、という状況は絶対に作りたくなかった。だからこそシンプルで良心的なインターフェイスを作り上げることができたと思いますし、今のところ、とても順調に機能していると思います。
このアプリケーションは、将来的にどのようなものになっていくと思いますか?
私達の現在の目標は、このシステムを幅広く普及させ、第3世代携帯電話のユーザーに受け入れてもらうことです。また、どこの場所にいようと、それぞれのデバイスから簡単に情報システムにアクセスさせることも目標に掲げています。残念ながら、こういった携帯電話は今のイタリアにはないので、日本の携帯電話を使いながら、試行錯誤を繰り返しつつ模型を作っている、という状態です。
こういったアプリケーションの未来は、かなり明るいものだと見込んでいます。コミュニケーション・デバイスの普及率は高まってきていますし、そういった新しいものを受け入れる体制はもうできあがっていますしね。他の人とつながりをもったり、ネットワークからいろいろな情報を得ることが普通になってきています。ネットをひとつの現状として受け入れているな、という印象がありますし、誰もがそれを注目すべきものだと理解しているのではないかと思います。
「今、この場所で情報を得る」という原理は、ネットワークの情報システムに鉾先が向かっていると思いますし、それがあるからこそ、どこにいてもいろいろな情報を得ることができているのだと思います。この点は、かなり私達の考え方に影響を及ぼした点ですし、これを常に頭に置きながら活動していきたいと思っています。この考え方が間違っていなければいいのですが。
LIMITEAZERO
住所:12 Via Aleardo Aleardi, 20154 Milan
TEL:+39 34 8305 4143
info@limiteazero.com
https://www.limiteazero.com
Text: Simone Biffi
Translation: Sachiko Kurashina