ASA-CHANG&巡礼 FEAT. 小泉今日子
PEOPLEText: Yasuharu Motomiya
こういったことも踏まえまして、日本の音楽界はどう変わっていくと思いますか?
A:非常に難しくて、シンプルな質問だね。
K:さっきもお母さんお父さん世代と言ったように、大人が聴ける曲ってすごく少ないと思うんですよ。ちゃんと探せば、私たちの心に届く曲が一杯あると思うのだけど、「背中」もそうだと思うんですが、見つけるのがすごく大変になっていますよね。分散されてるというか。昔は、テレビを見たら、演歌の人も出てれば、ニューミュージックの人も出てれば、アイドルも出てるし、もうちょっと尖がったロックの人も出てるという風に、共存してたのだけど、今ははっきり分かれているような気がします。
A:そうそう、メディアが一杯増えちゃって・・・
K:選ぼうと思えば選べるんだけど、選び方が分からないって言うことになってると思います。レコード屋さんに行っても、大型店ばかりが増えてしまって、その中で探す気力がないというか。逆に今度インターネットが発達してきて家にいながらにして、好きなものが手に入りやすくなってきてるから、また一回一つになっていろんなジャンルが共存してこないかなって思いますね。
そんな中で、巡礼の音楽はシーンの中で特異な位置にいると思います。
A:どっちかって言うとカテゴライズとか、今カッコいいと言われるのがすごくボクにとってカッコ悪いんですよ。今カッコいいと言われているものってすごく苦手なタイプで、その中心からすぐに逃げますね。ひねくれものかって言われたら、純粋に自分の音楽をやってると思いますし。もしかして、今考えたことだけど、小泉さんと巡礼の共通点って変えの利かない存在っていうところが似てるのかなと思いますね。後にも先にもないっていうか。
K:孤立してるかも。
A:孤立って悪いことでもないと思うんですよ。シーンていうものが無いと寂しい人もいるかもしれないけど、孤立したスタンスっていうのはすごく凛々しいと思うし、表現者としたらすごく正しいと思う。ムーブメントとかその中にいなくたってドーンといる存在感とか。
それではこういった時代で、何か大事なものって何だと思いますか?
A:そうだね、難しいよね。見つけにくいよね。そういうのが見付かったらこんな時代ではないと思いますし。明確な答えがあれば戦争も起きないしね。そこまで考えちゃうと、こういった表現活動がなかなかできないと思います。だから一生懸命やって、相手が感じ取るものが、例えば幸せだったり感動だったり、表現者としてやれることはそういうことですかね。
K:でも、若い人に向けていえるとしたら、カッコいい大人が少ないんじゃないかなって思って、お手本と言うか興味をもてる大人が少ないのかなって思って。だから頑張らなきゃって思ったりしますね。貫禄のある人がいて欲しいから、やりますよっていう気にはなってます。
A:オレより四億倍くらい強いね(笑)。
K:(笑)四億倍も!(笑)。友達とかもそんな風になってる感じがするし男の人が多いですけどね、そういう仲間がいるからできるかなって思って。ASA-CHANGともそうだけど一緒にできることがあるねって。一人じゃ、あがいているように見えちゃうかもしれないけど、みんなでやったらできそうかなって。貫禄のある大人になれそうかなって気がしますけど。
最後に今回のコラボレートで何かお二人のエピソードなどはありましたか?
A:そうそう、小泉さんの声をいただいたときが僕の誕生日の丁度前の日で、
K:あ、そうだね。
A:そう、それでご飯食べに行ってたら日が明けて、誕生日の日になって。久しぶりに会う、昔の友達にお祝いをしてもらって、すごい嬉しかったんだけど飲みすぎちゃって、ぜんぜん憶えてないの(笑)。
K: (笑)!
最後に読者の皆さんへメッセージをお願いします。
A:さっきも言いましたが、お父さんお母さんとか、普通にSMAP聴いている人にも聴いて欲しいし、何かこういう窓口を小泉さんが作ってくれた気がするので、どうか音の肌触りに惑われずに聴いて欲しいなと思います。
K:昔もね、スカパラとかと一緒にやって私のファンとかがスカパラに興味を持ったりして、逆もあったと思いますが、そういったリスナーの皆さんに新しい興味を持つ対象や、新しい何かが始まってくれたらなと思います。
自然体でありつつも強烈な存在感を放つこの二人が音像化した世界は、静かだが確実に変わり行く日本のポップシーンを見事に表現し、2004年という新しい年の幕開けに相応しいリリースとなった。そして、これからのASA-CHANG&巡礼はどうなっていくのだろう? という、好奇心をそそる、切なく、美しくも可愛らしい音の粒子が沢山詰まった巡礼ワールド・ミーツ・小泉今日子な「背中」なのであった。
ASA-CHANG&巡礼 feat.小泉今日子「背中」
発売日:2004年1月
収録曲:1. 背中 2. Parlor 3. 背中 (Instrumental)
CD-EXTRA「つぎねぷと言ってみた」PV
IDCV-1003 夢音(MU-ON)〜ex Hot-Cha
価格:1,260円(税込)
Text: Yasuharu Motomiya
Photos: Yasuharu Motomiya