ジョシュ・バームガーテン「イラリショナル・ライブラリ」
HAPPENINGText: Ania Markham
ディ・フェンツファブリックでの第1回イラリショナル・ライブラリが開催されたのは、昨年の4月のことになる。幅広い範囲のパフォーマーが大勢登場したが、その中には地元で人気のあるフランス・クラークスの姿も。そのクラークスは(ジョシュに言わせると「パフォーマ−、アーティスト、ライター、そしてミュージシャンとしてかなりの才能を持つ、若き天才」である)自身の息子、ボリスについての詩を発表した。その他にも、音楽を演奏する者、またディ・フェンツファブリックの生みの親でもあるメンバーが、お笑いグループとして登場した。40代から60代半ばまでの画家、ライター、アーティストも参加した。あまり知名度がないアーティストも少なくもないのだが、それもハーレムの新たな特徴とも言えよう。どのスケッチ作品も、かなり奇抜なものばかり。そんなイベントだからこそ、ジョシュがイラリショナル・ライブラリの開催オファーを待ち望んだのも自然なことだ。
ライブパフォーマンス・ナイトの企画運営を担当したのは、イラリショナル・ライブラリが発行する雑誌「SMECHT」。『これもまた、僕とマーティンの長年の夢が実現したような感じのものです。双方がパンク雑誌を好んで読んでいたという同じ過去があったので、そういったところからインスピレーションを受けることは自然の流れでした。SMECHTは、一つの独立した雑誌ですし、とても基本に忠実な内容だと思います。それに作業に必要な道具も、タイプライターと、のり、はさみ、ホチキス、それに良いアイディアだけですし。何かを切り貼りして…という作業は結構好きです。それに、現実の世界から何か新しいものを選んで、新しい現実の世界を作り上げるのも面白いです。SMECHTでは、ジャンルの違いがあろうとなかろうと、イラリショナル・ライブラリで活動する全ての詩人やアーティストを紹介しています。でも同時に僕達は、常にできる限り国際的に活躍できるようなアーティストの発掘に全力を注いでいます。』
会館の閉鎖まで、見事な成功を成し遂げてきたイラリショナル・ライブラリ。しかしその閉鎖の時期はちょうど、ジョシュがアムステルダムでの展開を視野に入れ始めた頃だ。今の所アムステルダムでは、カフェ・バンガローと文化施設オッキーでイベントを開催。どちらも高い注目を集めたのだが、同じイベントでありながらも、更に新たな名前と評判を作り上げなければならないものとなった。全ては時間の問題だ。そしてプロジェクトを必ず成功させたいと思う強い気持ち。そしてその可能性を見極めることだ。
イラリショナル・ライブラリの前には、どのような未来が広がっているのであろうか?
『ジャズからパンク、そしてラテンまで、様々な音楽の才能を持つアーティストを集めて、シームレスな夜を演出してみたいです。それにプラス、詩人、俳優、パフォーマーも一緒に夜を盛り上げてくれたら最高ですね。イラリショナル・ライブラリが、お客さんの前ではじめてパフォーマンスをする、という人たちの為のプラットフォーム的な存在になってくれたらという夢もあります。自由にマイクで発言できるセッションを開いたり、50年以上のキャリアを持つベテランアーティストをゲストに迎えたりするのもいいですよね。SMECHTの最新号も、あと2、3ヶ月で発行までもっていけそうです。コンピレーションCDの制作も同時進行しています。また、これまでにイラリショナル・ライブラリに参加した人たちをフィーチャーする演劇も進められています。エイドリアン・アルセマ・アンド・ザ・グッド・ルッキング・インテレクチュアルズに、その劇のサントラを担当してもらえないかと考えているところです。コンピレーションCDに関しても、これまでこのイベントでパフォーマンスを行ったバンドが楽曲を提供してくれています。詩の朗読も収録されています。ちょっとした小冊子付きの、サウンド・コラージュのようなCDになればいいなと思っています。今年の夏には、ニューヨークでイラリショナル・ライブラリを行い、アンダーグランドで活動するコラボレーターや仲間達を紹介するという計画もあります。それまでは、また再びディ・フェンツファブリックが日の目を見られる場所を探したり、地元でイラリショナル・ライブラリを開催し続けていくつもりです』。
Text: Ania Markham
Translation: Sachiko Kurashina
Photos: Mark Visser
