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ソール・ライターの原点 ニューヨークの色

HAPPENINGText: Alma Reyes

謎多き写真家ソール・ライターはかつて、『重要なのは、それがどこにあるか、何があるかではなく、それをどう見るかである』と語った。この言葉は、写真家としても画家としても多才なこのアーティストの人生と、瞬間をとらえる、彼の鋭い洞察力を十分に要約している。

現在、彼の未公開のモノクロ写真や絵画など、最近発見された作品群を含む新旧400点以上の作品が、渋谷ヒカリエ9F・ヒカリエホール ホールAにて開催中(企画制作:Bunkamura)の展覧会「ソール・ライターの原点 ニューヨークの色」で8月23日まで公開されている。Bunkamura企画制作によるソール・ライター展は、今回で3回目。ソール・ライター生誕100年を記念して開催される本展では、彼が撮影した、1950年代から60年代にかけてのモノクロのニューヨークの街並みやスナップ写真、芸術家のポートレート、ファッション写真、カラープリント作品や絵画などを分類ごとに紹介。また、約11,000点のコレクションから厳選された未発表のカラースライド約250点が、初めて大型プロジェクションで閃光を放つ。


ソール・ライター《無題》撮影年不詳 © Saul Leiter Foundation

1946年、23歳になったライターは、当初画家を志し、父親の反対を押し切って故郷のピッツバーグからニューヨークに移住した。彼は1952年にニューヨーク5番街に自身のスタジオに居を構え、晩年まで60年近くそこで暮らした。彼は、そこで生活を営む人々を観察することに没頭した。終戦直後のニューヨークは、文化の新たな中心地として抽象表現主義などの芸術の新潮流が次々と生まれ、多くの野心的な芸術家たちを魅了していた。この地でライターは、意欲的な若い芸術家たちとの交流の中で、写真の表現メディアとしての可能性に目覚め、絵筆とともにカメラで自分の世界を追求していくようになる。


ソール・ライター《無題》撮影年不詳 © Saul Leiter Foundation

展示されたモノクロの写真は、物思いにふけるように見つめる少女を、ガラスに映る彼女の控えめな姿とともに写しており、行き交う人々の慌ただしさとは対照的だ。もう一枚は、明るい車の中で、ほとんど影のように深い色合いのドライバーを写したもので、背景には無名の店が写っている。どちらの写真も、静寂と喧噪の間、そして光と闇の間の時間の動きという、ある種の広がりをもって描かれた、当時のニューヨークのストリートライフを伝えている。モノクロ写真の多くは彼自身がプリントしたもので、労働者階級の移民が多く住むイースト・ヴィレッジで撮影された。


ソール・ライター《アンディ・ウォーホル》1952年頃 © Saul Leiter Foundation

ライターは、撮影活動を始めたころ、避難所と創造的表現を求めてニューヨークに集まった多くの前衛芸術家たちに囲まれていた。彼が写真の道に進むよう勧めたユージン・スミスを始め、アンディ・ウォーホル、ロバート・ラウシェンバーグ、マース・カニングハム、ジョン・ケージ、ダイアン・アーバス、アンリ・カルティエ=ブレッソン、セロニアス・モンクなど、彼が撮影した身近なアーティストたちのポートレートは、当時、爆発的なエネルギーで新しい表現が日々生み出されていたニューヨークのアートシーンの息吹を感じさせてくれる。同時に、彼の写真家としてのキャリアもさらに強化されていくこととなる。

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