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ドーマ・コレクティブ

PEOPLEText: Gisella Lifchitz

例えばどのような活動をしていますか?

メンバーそれぞれが、いつも何かしら違うことをやっています。一応、チームのように活動はしているんですけどね。コリエンテス通りに真夜中に行って、そこらじゅうにステッカーを貼り付けてみたことがあるのですが、これは、その翌日に街に来た人たちがメッセージに溢れた状況を目の当たりにするというものでした。牛の絵を、地下道の階段に描いたこともあります。ジュリオ通り9丁目にこの地下道はあって、交差しているのですが、沢山のアーティストに参加してもらって、それぞれの牛の絵を描いてもらったんです。明らかに今までとはまったく違う風景を作り出すことができました。しかも今でもこの状態のままです。

牛は特にお気に入りのモチーフなのでしょうか?

ドーマにとって牛は、強いものの象徴ですね。畜牛はここでは、すごく自然な存在。トラックに乗せられて、牧場からブエノスアイレスまでやって来る畜牛はよく見かけますしね。もうなんだか、ここら辺は牛でいっぱいです。とりあえず量だけはすごい、というかんじ。だから、時には人だって牛みたいに動くこともあるんだぞ、ということを表してみたかったのです。時々、まるで畜殺場に向かってるのか、っていう具合に歩いている人、いるじゃないですか。

場合によってはそれは、ちょっとタブーですよね。

そうですね。実際に殺されるわけではないですからね。


MALBA, Buenos Aires, 2003. Photo: Pablo Junquera

MALBAで開催された展覧会「コンテンポラリー」について教えて下さい。

リアリティというものに、ひねりを入れてみたかった。そこで、300個のオレンジ色の円錐コーンを真っ白な美術館においてみたのですが、これはかなりパワフルな試みでした。風船も天井から下げてみたのですが、これも贅沢な挑戦でしたね。オープニングの日、75歳の女性に、円錐コーンを蹴ってどかしていいかと聞かれました。僕達の答は「もちろん」。そうしたら、彼女だけでなく、他の人も一緒になって蹴りはじめましたよ。こういった飛び込み的な出来事も僕達にとっては刺激的でした。

ガラスの後ろに汚れたタンクがあって、その中に人間のからだが逆さまになって突っ込まれている彫刻がありますよね。これも、あの光が燦々と注ぎ込む美術館の中では、私達自身の一部のように感じました。紹介文には「ガラスを壊せ」とありました。壊すことで、私達の中にある、深い部分へと続く道があるんだぞ、と言われているような。私はずっと彫刻を見続けていたのですが、すると、静かで、常識ではあり得ないようなバス旅行の風景が思い浮かびました。何だかまるで、ドーマのみなさんが屋根の上から、あるいは雲の上から全てを見透かしているような気分になりました。その彫刻について教えて下さい。

僕達が予想していたことなんてもうどうでもいいぐらいに、見に来てくれたみなさんが、本当にそれぞれのやり方で応えてくれたんですよね。今回の展覧会は、美術館というものを超越した、僕達に影響を及ぼす気持ちから発生したものでした。リアリティというものに対して僕達が注意したこと。それは、窓の外にある世界です。カラフルな美しさや、性能の良い防犯カメラと一緒に僕らは、美術館に居るかもしれない。でも、全ては外部的な現実から来るもの。そして僕達は、その現実という世界に住んでいるんだ、ということを表現したかったのです。実際に美術館には住んでいないし、大理石の床もなければ、真っ白い家も持ってないですしね。

今後はどのようなプロジェクトを行っていく予定ですか?

現在は選挙活動を行っています。と言っても、嘘の選挙活動で、もちろん立候者も架空の人物。革のジャケットを着た王様も登場します。ストリートに貼るポスターとか、グッズ販売とか、この選挙活動が色々なものになる予定です。もちろんお金も発生します。あと、遂にスタジオを持つことができました。将来開催する展覧会に向けて、新しい作品を制作しているところです。

偽物の王様から本物の怪獣まで。その独特の考え方で、彼ら独自のリアリティを作り上げるドーマ。そしてその見解は、日々成長し続けているのだ。次に何を見せてくれるのか、ぜひ注目を。もしストリートで、テクノロジーが私達に何かを訴えかける時があったら、もし私達が窓をぶち壊すことができたら、その時にはきっと、今までとは違う目でこの世界を見ることができるのだろう。

Text: Gisella Lifchitz
Translation: Sachiko Kurashina

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