東京デザイナーズ・ブロック 2002
青山通りを南に戻ると、右手に発見した白いドームは、「スプートニク・ドーム」。スプートニクは世界中を巡回している展示会ツアーで、このドームでは「架空の近未来飛行場」というテーマの下、作品が展開されていた。特に気になったのが、ドームの入り口付近にあった辻邦浩の壁状のスピーカー。ここからは、「駅」という場所特有の音が流れていたのだが、スピーカーが何層にもランダムに配置されていることで、実際に駅にいるような感覚を覚えたし、音が波のように聞こえ、深みがあった。
Sputnik Dome
私がドームを訪れたのは夕暮れ時。DJブースとスクリーンを兼ね備えたドームではその夜、「宇宙」をテーマにしたライブイベントも用意されており、それを待ちわびる期待感と、近未来空間を楽しむ人々で溢れ返っていた。
ドームの横の小道を行くと見えたのは「スプートニク・パッド」。ここではジャスパー・モリソン、マーゴット・バローロの作品をみることができた。
Jasper Morisson “Sake Master”
モリソンが初めて手掛けた和食器「Sake Master」は、骨灰磁器として区別される作品。シンプルなデザインと美しいフォーム、そして骨灰磁器特有の白の上品さが際立っていた。プラスチック容器もあったが、やはり持った感じの程よい重さや感触などを比べてしまうと、磁器の方に惹かれた。
Works of Margot Barolo
思わず、ぎゅっと抱きしめたくなる気持ちにかられたのは、バローロの作品。彼女はスウェーデンのストックホルム在住のデザイナー。スウェーデンという寒さの厳しいお国柄だからだろうか。見ただけでもそのダウン生地で作られたソックス、毛布、赤ちゃん包み、ガウンからは、ハートが詰まった暖かさが感じられた。手にしてみると、予想以上に軽いことに驚く。ガウンの形は着物に通じるものもあったし、ソックスは、ヨーロッパのおとぎ話に出てくる小人の靴のようにも思えた。
若者の往来が激しく、個性的なショップが多く並ぶキャッツストリートにあるHHSTYLEの前にあった爽やかな青が眩しい作品は、クライン・ダイサム・アーキテクツのもの。
Klein Dytham Architecture “Gummi (a gumdrop) bath”
洗面台とお風呂、そしてシャワーが一体となったこの作品は「グミバス」と呼ばれ、その青色の部分の感触は、その名の通りまさにグミ!しかもよくみると、凸起となっている部分はお風呂の友、あひるちゃんが象られており、見物人も皆一様に「かわいい、かわいい」を連発していた。この青色の部分は「テクノジェル」、あるいは「形状記憶ジェル」と呼ばれ、普段は車椅子の座面、手術用の枕など、医療の分野で使用されている衝撃の吸収に優れ、保温性も高い優れもの。保温性が高いのはお風呂の場面では嬉しい限りだし、たとえ万が一、入浴中に足を滑らせたとしても、ジェルのお陰で怪我を免れるかもしれない。かわいいだけではなく、実はものすごく頭のいい空間ではないだろうか。その日の東京の気温は24℃。ハワイアンブルーのような青で統一されたこのバスルームを見ていると、こちらまで爽やかな気分にさせられた。
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