ソーシャルワーク・カジャ・マドリード:新人キュレーター支援プログラム 2002
HAPPENINGText: Terevision Ruiz
今の時代、アートの展覧会を取り仕切るキュレーターの仕事は、アーティストの作品と同じぐらい重要な存在である。今年の初めから開催されている「ソーシャルワーク・カジャ・マドリード」というプログラム。これは、新人キュレーターを支援することを目的に、展覧会プロジェクトを制作するための、3つの助成金を与える事を目的に計画された。そこには、約200の応募が集まり、それらが著明なキュレーターによって審査された。3つの展覧会を含んだ最終結果は、首都マドリッドの中心にあるラ・カーサ・エンセンディダで公開されている。
選ばれたプロジェクトは、パロマ・ブランコの「違法な人はいない」、シリア・デル・ディエゴとクリスチャン・アノ・フロリッチの「I(de)ntimidados」、ビクター・デル・リオの「培養」の3つである。どの作品も、グローバル化、個人の自由や移住についてといった現代的なテーマを共通に扱っている。またキュレーター、アーティスト共に30代前後の若者ばかりが集まった。
Ninguna persona es ilegal, exhibition view
移住と人権に焦点を当てているのはパロマ・ブランコのキュレーションによる展覧会「違法な人はいない」。批判的に、そして皮肉的に、選ばれた9人のアーティストは、今日、取り扱われる回数が多い残念な社会的認識を表現している。
Mundos Sonados, El Perro from Ninguna persona es ilegal
エル・ピエロの制作した「夢の世界」というタイトルの架空の旅行ガイドブックには、トラベルボックスがついている。移民が輸送される際に入るこの箱には、電気、水も供給され、トイレも設置されている。それ故に移民は「快適に」旅を遂行できるのだ。
i(DE)ntimidados, exhibition view
スペイン語の「Identidad」(身元)と「Intimidad」(親密)という2つのコンセプトを効果的にフォーカスしたシリア・デル・ディエゴとクリスチャン・アノ・フロリッチのキュレーションによる展覧会「I(de)ntimidados」には、8人のアーティストが参加している。欲望の井戸、私たちの考えを聞くことができる洞窟…といったテーマで催されたもう一つの展覧会では、アーティスト達は、作品を通してより奥深い見解を取り扱い、思考を促させる。
Cultivos, exhibition view
ビクター・デル・リオのキュレーションによる展覧会「培養」で扱っている題材は、ウィルス。4人のアーティストにとって、ウィルスは、言わばアートのためのソーシャル・コードであり、ビジュアルフィルターなのである。
Inéditos 2002
会期:2002年7月31日(水)〜9月8日(日)
会場:La Casa Encendida
住所:2 Ronda de Valencia, 28012 Madrid
TEL:+34 915 06 2180
https://www.lacasaencendida.com
Text: Terevision Ruiz
Translation: Sachiko Kurashina
Photos: Courtesy of La Casa Encendida