W.M.E.V.V.J.
THINGSText: Bastiaan Rijkers
オランダ人アーティストでファッションデザイナーのシモン・デ・ブールが古代キニク学派の長をモチーフに、新作「ラグズ」を発表した。ブランド名は「W.M.E.V.V.J.」。意味は『自分自身の主人たれ、そして創造者であれ』というニーチェの言葉の引用だ。W.M.E.V.V.J.は店鋪をもたず、商品を売る拠点ももたない。予期せず様々な場所に現われては消える。古代キニク学派の哲学者たちの存在や思想にインスパイアされたのだ。W.M.E.V.V.J.は現代社会の生活様式の意味を再定義しようとしているのだ。
キニク学派の哲学者達は、約紀元前445〜365年に活躍していた。道徳的に生き、また自然に従って生きる事は幸福を達成するのに必要不可欠だと彼らは考えた。富や社会的地位という慣習的な価値観を軽蔑し、彼らの考えでは自然に従って生きる事にそれらは反するのだ。キニク学派は哲学としてきちんと組織される事はなく、学術というよりも生き方である。W.M.E.V.V.J.の作品の中で再生されたキャラクターの一つにディオゲネスがあげられる。
ディオゲネスは、キニク学派の哲学者で、キニク学派の長アンティステネスの使徒となった。ディオゲネスは師匠の原理と特質を受け継ぎ、野心を放棄し、金持ちや名誉を持つ人を軽蔑し、贅沢を避難したことで有名だ。粗末なマントを着て、財布や荷物を持ち歩き、人の玄関や公共の場所を訪れ日々の糧を得ていた。
W.M.E.V.V.J.スタイルブック。W.M.E.V.V.J.は、カタログブックを作っているので、請求することも可能。この「スタイルブック」と呼ばれるカタログブックは、W.M.E.V.V.Jのニュー・コレクション「ラグズ」の核となるもので、キニク学者達の話やW.M.E.V.V.J.の新作「ラグズ」の作品が活き活きと紹介され、本の中では「ライフスタイル」の再定義が試みられている。幸福、健康、エロチシズム、美、成功などというものがほとんど存在しない洗練された世界とライフスタイルというものが今日同義語となりつつある。マスメディアが絶えまなく新たな流行、トレンドを作り出そうとして、ライフスタイルは多くの消費目標に支配された。
このニューコレクションは、極めて実用的で様々なテーマの章に別れている。
W.M.E.V.V.J.ホームレス:キニク学者たちは他の人が捨てたボロ布をまとっていた。セカンドハンドの服を選び使用する事によって、W.M.E.V.V.J.は、現代のシニシズムを表現する道を見つけた。異なるアイテムが独創的に用いられ、ポケットとコートの一部がバックパックになり、コートの腕部分は新しいコートになり、二着のドレスコートが繋ぎあわされて一つの作品になったりしている。
W.M.E.V.V.J.バンクラプト:キニク学者たちの所有物は、持ち歩けるものだけだ。ある日ディオゲネスは、子供達が手で水をくんで飲んでいるのを見て、迷わず安心して水筒を投げ捨てた。彼は真の自由のために様々な苦しみを味わった。トリビュートとして W.M.E.V.V.J.は、1000ギルダー(約500ドル)の本物の紙幣をハサミで切って、堂々たるネックレスを作り上げた。モットーは「ただ着るために使ってはいけない」。
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