VIDEACY 2001

HAPPENINGText: Aya Muto

今までは商業ベース、もしくは口コミでしか情報網が発達していなかったビデオに、改めてメディアとしての光を当てるイベントが増えてきた。今では大手プロダクション映画が全てデジタルで行われることも珍しくなくなり、そういった高度なデジタル技術がより身近になった影響もあるのだろう。ただビデオはあまりに消費者に近づき過ぎて、メディアとしての荘厳さを失っていた気があったことも事実。アートとしての神聖さが大量消費の行為で希釈されてしまう、これは少し前にスチル写真が陥っていたジレンマに他ならない。各国の美術館、画廊界でも写真が芸術としての安定した、いや、うなぎ上りのステータスを築きつつある今日、今度はビデオにその価値を問いただされる番がまわってきた。

ロサンゼルスをベースに活動する映像・実験音楽作家のアンドリュー・バックスバーグが新しい切り口を見い出すべく、この低コストで制作に導入できるメディアに着目。今回のイベント、「VIDEACY」を主催したアド・ホック・アートは、そうして一年半ほど前に日の目を見る。

『どの“群”にも属さないアーティストやクリエイタ−達の分野を超えた共通の発表の場を想起しなければ、という衝動と需要に突き動かされてアド・ホック・アートを立ち上げた。その主軸となるのは、ギャラリーや美術館などの展示に向けた伝統的/保守的な形式・様式外、また商業ベースの産業の影に隠れて値する評価を受けられていない制作活動をこぞって奨励しようという試み。ここではインディーズや実験派のアーティスト達にはもってこいの“ツール”であるウェブやインターネット技術を積極的に駆使し、ベースとなるロサンゼルスはもちろん、世界中のアート界、また一般のオーディエンスと作品を分かち合うことを目指している。 アド・ホック・アートの任務は、芸術的なレジスタンス、メディア・アート・テクノロジーの発展、文化的展望、多様化・非同一化の遂行を通しておのおのアーティストに制作様式の幅を広げてもらい、その行為の発表の場となるのに相応しいイベントを主催してくことにある』とバックスバーグは述べる。

本イベントの開催にいたって、12組のアーティストが世界中から集められた。意図は簡単。彼等の最新のビデオアート、アニメーションのいわばサンプリングを通して、各アーティストが遂行するビデオ特有の様式や機能を紹介。「楽しんでもらえるといいけれど、」と控えめな言葉でプログラム紹介が始まる。

『動画を捕らえたり制作する行為が、音、音楽、インスタレーション、パフォーマンス、またそのあいのこ達と融合することによって、アーティスト達は未来への前進を遂げる。デジタルアートはアーティストに技術的に挑戦をし続けるとともに、一方でジャンルを入り交えることを可能にしてくれる。このプロセスで多くのパターンが生まれ、アーティスト達は自身の人間性をより忠実に反映する方法を選択していく。作品とアーティストの関係もしかり、それから他の作品との比較を強いられることによって昇華や裏切りを経験する。』そんな相互作用の促進にも本イベント開催の意図はあるようだ。『音声と音楽も作品の重要な一部を成している。というより、ほとんどの人が視覚的覚醒にとっての最大の修辞だと思ってるんじゃないかな』というバックスバーグも映像作家の他に実験エレクトロ音楽家、という看板を掲げている。

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