三宅一生「メイキング・シングス」
HAPPENINGText: Rei Inamoto
イギリスの新聞「サンデータイムス」は、三宅一生について「世界で最も独創的なファッションデザイナー」と述べている。彼は「21世紀のメーカー1000人」にも選ばれている。これまでのどのデザイナーよりも賞賛され、広く知られているデザイナーだ。それゆえに、彼の作品の良い点について書くことはありきたりのことになってしまう。注目すべき点は、三宅一生の、常に革新し続け、デザインのプロセスを発明する能力だ。全てのデザイナーができることではない。
この、もともとはパリのカルティエ現代美術財団で開催された「MAKING THINGS」という展覧会で三宅は、彼のデザインのプロセス「A-POC(A PIECE OF CLOTH)」を発表した。そのプロセスはものすごくシンプルで複雑だ。ニットのチューブから作品ができ上がるという点ではシンプルだが、そのニットのチューブをカットして靴下や帽子、ハンドバッグなども作ることができるのだ。
ギャラリーのある部屋には、マネキンの行列にこの素材をぐるぐる巻きにした巨大な輪が広がっていた。展覧会のガイドの説明によると、その素材はコンピューターでプログラムされた工業用の編み機で制作されたもので、いろいろな種類の洋服を作れるようにカスタマイズできるらしい。ショーでは他にも、丈が2メートル以上もあるパンツで薬品に浸すと人間の形に縮むものや、シンプルな正方形の布を針や糸を使わずに体を包み、エレガントなドレスに仕立てることができるものなど、斬新な作品が数多く見られた。
今日、多くのデザイナーが富や名声にとらわれているのに対して、三宅一生はデザインの技にとりつかれている。彼は独自のプロセスと素材を発明し、常人の想像を超越した服を作り出す。彼は、絵の具や絵筆、カンバスを自分自身で作ってしまう画家なのだ。
彼の作る服の実用性を疑問に思う人もいるだろう。その殆どは極端に不規則な形で、極めて変わった素材が使われている。表面を金属で覆われた服を維持するにはどうしたらいいか想像するのは簡単なことではない。それにもかかわらず、ファッション、インダストリアル、グラフィックデザイン、その他クリエイティブ産業のデザイナーにとっては、この21世紀の巨匠から学ぶことが沢山ある。彼のプロセスや才能だけではなく、デザイナーとして信じることをやり通す意志が、他の誰よりも優れたものにしているのだ。
Issey Miyake “Making Things”
会期:1999年11月13日(土)〜2000年2月29日(火)
会場:Ace Gallery
住所:275 Hudson St., New York, NY 10013
TEL:+1 212 255 5599
https://acegallery.art
Text: Rei Inamoto
Translation: Mayumi Kaneko
Photo: Raymond Meier © The Miyake Issey Foundation