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フロッグ・ネーション

PEOPLEText: Akira Natsume

ゲーム(オタク)+ クラブ(かっこいい)という図式は中味の差はあれど、ユーザーだけではなく作り手の心をもどこかで安心させたに違いない。そして、大さんはあのポケモンを世に送り出そうとしている真っただ中のゲームフリークに落ち着く。ポケモンの開発には直接には関わらないまでも、閉鎖的なゲーム業界に一つの穴を開けて新鮮な空気を送り込む事に成功したことだろう。大さんもたくんさんの事を田尻さんから吸収したとインタビューや本で答えている。ゲームフリークでは「パルスマン」というゲームの広告宣伝に関わり、大さんらしくゲーム好きのマリンこと砂原さんと、大さん + 田尻さんが組んだ異色ユニットステレロタイプ名義でコロンビアからCDを出したり、当時大さんがモニターをしていたアナーキックアジャストメントにTシャツを作ってもらったりしていた。そしてテクノ漬けの毎日が始まる。

『その頃って追っかけて追っかけて毎週のようにクラブに行っていたんですね。毎週会っている奴は一緒なんですよ。野田さん(後のエレキング編集長)もいたし、三田さんもいたし、今一緒にやっている現ちゃんもいたし、いろんな奴がいたんですね。だけど一緒に踊ってはいたけど一度も話した事はなかったんですよ。その時に、5時からやる事になったんだけど(クラブに警察が入って、他のクラブに場所を移す事になった)1時間空いてしまって、みんなで西麻布の交差点のあたりでワーと待ていたんですね。石野君(石野卓球)もいたし、野田さんもいたし、イベンターの野村さんもいてCMJKさんもいて、マネージャーの森川さんもいて、弘石君もいて、そして渡辺健吾もいて、それで「毎週会っているよね。」って話になって、「こういう音楽いいよね。でも毎週会っているけど、やっているクラブはイギリス人で、かかっている音はドイツの曲で、なんで俺達、日本にいて日本の曲は一曲もかからないんだろう。」という話になって、で、「こんな風に毎週会っているけど、お互いは原稿とか読んで知っている訳だから一度昼間会ってみねえ。」という話になってディスクガレージという事務所で始めて昼間会って話をして、それがフロッグマンの前身です。それで、レコードを作ろうとなったんですね。』

そしてフロッグマン・レコード、ライターとしての大さんが始まる。これまでに数多くの音楽やグラフィク、国内外の面白い情報を、大さんやその仲間達から僕は教えてもらった。そして去年、ライターとしてこれまで数多く書いてきた文章をまとめた「ジェネレーション-N」を様々な諸事情で四苦八苦しながらも出版する事に成功する。

『この本は紹介屋としての自分が5年ほどいてその間のまとめに近いですね。これを出しておかないと今度自分が作る方にいけないなという意識があって、これをを出した事によって次は作り手に回りたいという、タイミング的にもちょうど、森本さん(森本晃司)や渡辺監督と知り合えたのもこの本を作っている途中のタイミングだったので、これを出したら俗にいうライター仕事とも少し離れて、作り手の方に回りたいと思って、ここ二年程がんばっている感じですね。これ書き下ろし一つも入れてないんですよ。それがコンセプトで、ベストアルバムにしたかったんです。後書きも自分ではぜったい入れないで、これまでお世話になった3人の人達(秋元康、田尻智、桝山寛)に後書きをお願いしたんです。ハードディスクレコーダみたいなもので、ここは使えるここは使えないと選んで、そのかわり書き直しはすごいしたんですね。自分の中ではリミックス作業みたいなもので、石野君がスタジオでやっている作業なんかを見ていて自分でもこういった事を文字を使ってやりたいなと思って、切ったり貼ったりしながら作ったんです。』

大さんは現在でも、KEN-GOさんやフロッグマン・レコードを支持する沢山のクリエイティブなスタンスのユーザーや作り手と共にアルバムをリリースしている。フロッグネーションでは「カウボーイビバップ」の脚本の幾つかと舞台設定を手がけ(ジャミング・ウィズ・エドワードなど他数話。シリアスな話しが多いビバップにおいてテクノ色が多くエドが活躍する数少ない話しを書いている。ジャミング・ウィズ・エドワードの小説化に向けて執筆中で、監督とリミックスCDを準備中とのこと。)ゲームではナムコの「R4 -RIDGE RACER TYPE 4-」や、今開発中の「エースコンバット3 エレクトロスフィア」の制作に関わり、脚本を書いたりしている。辻仁成と後藤繁雄が編集する文芸誌「WESTLAND vol.1」において「ビート・パーミニッツ」と題した小説の連載も開始した。この小説は90年代のクラブカルチャーを生で感じえた者のみが知る事のできた感動を一つ一つ丁寧に書いたものである。そして海外に向かう日本人DJの視点を通して90年代にビートが存在したことを証明している。


エースコンバット3 エレクトロスフィア © 1999 NAMCO LTD.
「エースコンバット」シリーズ最新作。前作からの良さを引き継ぎ、かつ今回はプレイヤーの決断がストーリを変えていくマルチミッション・マルチストーリー展開を目指す。「R4 -RIDGE RACER TYPE 4-」で見せたあの朝焼けの美しいグラフィックを思うと、かなり楽しみ。

『三大要素があって、「ガンダム」「ゼビウス」「YMO」というのが、小学校6年の時にあったんですが、それが全てです。僕の原点です。このPOPで、アンダーグランドで、裏設定の多さ、これってこの3つに共通するじゃないですか、これが今の僕の趣味に全て共通するんです。』

そう話す大さんは彼がこれまで受けてきた様々な素晴らしい作品を身体中で感じて、その作品に対し自分の作品をもってリスペクトを返そうとしている。僕達はネットワークを手に入れた。それは遠く離れても活動の場所が違ってもお互いをリスペクトする環境ができ上がったということではないだろうか、あいさつ一つで僕達は世界をまたにかけてコラボレーションをしている。時代を越えて。最後に「これから何をやっていきたいですか、目標はありますか?」と大さんに質問をぶつけてみた。

『遠い事は何も考えていないです。それよりも今の出会いを大切にして今やりはじめている事を形にしていくことが重用です。』

東京はとても情報が多くて、時には何が良くて何が悪いのか見失いそうになることがある。その中で大さんのように興味の対象をしっかり捕え、確実にこなしている姿勢には学べきものが沢山あると感じた。

Text: Akira Natsume

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